STAGE GEAR 第三章

□白い世界は、まだ夢想の中。
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街の人々は、ゴルドウィル国騎士団の駐屯所にある訓練用の広場に、簡易テントを張って避難していた。
今回の黒い怪物は、既存の兵器や魔法で倒せるタイプだったらしく、外からの侵入や、何匹かの怪物を撃退していたり、騎士団も活躍していたそうだ。
火はすっかり止みましたが、街の復興作業を始める前に、まずは亡くなった人の遺体を捜したりする予定だった。
僕たちは、その中の一つのテントを借りてゆっくり休むことにした。
寝袋の中で、眠りにつき、夢を見る。

あのレンガつくりの綺麗な町並みが、面影もなく崩れた廃墟の中、一人の女性が逃げていった。

後ろからして、ジュリアさんだと僕は判断した。

ああ、夢に見るほど、今日の出来事が忘れられないんだ。

夢の中の僕は、そう思った。

瓦礫の中から、助けを呼ぶ声が、苦しいと泣く声が、響く。


たすけて、くるしい、しにたくない、いたい、いやだ、こわい。

様々な負の感情をそのままぶつけてくる叫ぶような声が、僕を襲った。

『オレだったら、全員救えた』
夢の中のわたしの後ろから声が聞こえる。
『いや、流石にあんたでも救えないわよ』
違う声が聞こえる。
『確かに……言い過ぎかな。じゃあ、言い直しましょう。オレだったら、ジュリアさんを救えた』
いらいらする。
夢の中でも、あの人は僕を苛立たせた。
あなたのせいもあって色々大変なのに。
でも、この夢は現実を物語っていた。
あの人は、僕以上に人を救えた。
普段適当なことしかしないくせに、必要なときに必要なことをする人だと。

ジュリアさんを黒い怪物が襲う。

だけど、その怪物を、あの人が、最初に出た蜘蛛の怪物を倒した銃で、撃ち抜いた。

あの人がジュリアさんを救う、そのもしもの映像こそ、現実であればよかったのに。

「でも、ダメ。彼は、君のような英雄にはなれない」

あたり一面が白銀の雪景色にかわったとたん、そんな声が響く。

その瞬間、あの人は、ジュリアさんも銃で撃ち殺したのだった。

心底楽しそうな笑顔を浮かべて、その銃の引き金を何度も。

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