黒バス小説

□青笠
1ページ/1ページ

「なー笠松サン、超暇なんだけど」
「うっせー黙ってろ。人の家上がらせてもらってるだけ感謝しやがれ」
「えー超ヒマー。構えよー」

ジリジリと太陽が地を支配する、夏。
夏休み、受験生である笠松の家に半ば強引に上がり込んだ青峰は、男子高校生にしては綺麗に片付いた部屋をぐるりと一周見回しては溜息を吐きながら背を向けていた笠松へとだるそうに声をかけていた。

「かーさまーつさん」
「なんだよ煩ぇな」
「つめてーの」

黙々と受験勉強を進める笠松に対し、勝手に人のベッドへと上がり込み暇そうにする青峰は心底詰まらなそうに相手に声を掛ける。
その声が一頻り止むとやっとか、と肩を撫で下ろし集中するように笠松はノートにペンを走らせる。
それを見ていた青峰は面白くなさそうに相手の後ろ姿を眺めているとふと何かを思いついたように口角を吊り上げる。

「ゆきお」
「っ・・・」

相手の背後へ音もなく移動し優しく抱きしめ耳元で名前を囁くと、笠松の顔はみるみる真っ赤になっていき手に握っていたペンを落とす。
相手の反応に気を良くしたのか再度笑みを浮かべると目の前の笠松の耳をぺろりと舐め上げては低い声で囁く。

「なぁ・・・どうしたんだよ、勉強、しねぇの?」
「ばっ、耳元で喋んな!」

顔を真っ赤にした笠松が舐められた耳を隠すように手で覆うと青峰は口元がニヤけるのを止められずに相手を先程より強く抱きしめる。

「勉強進めてていいぜ、センパイ?」
「っ・・・性格悪ぃ」
「かはっ、性格悪ぃ上等だ」
「・・・ん」
「?」

笠松の反応を楽しんでいた青峰であったが、後ろから抱きしめていた相手の腕が首に回され顔を上に向けられたのを見ると自身の首を傾げながらどうした?と声をかける。

「お前のせいで勉強どころじゃなくなっちまった。・・・その、・・・」
「・・・なんだよ、ちゃんと言えよ」

言葉を詰まらせながらそれでも懸命に繋げようとする相手を見て今すぐ押し倒してしまいたくなる衝動を抑えながら、急かすように口を開き相手の言葉を待つ青峰は笑みを止められずにニヤニヤと口角を吊り上げている。

「・・・き、キス、してくんねぇ・・・の?」
「っ」

笠松の言葉に今度は青峰が顔を真っ赤に染め上げ思わずに相手の肩を反対へと押し、ふるふると震えるのを見た笠松が首を傾げた。

「・・・おい、どうしたんだよ」
「悪い・・・今キスしたら俺、もう止まんなくなっちまうかもしんねぇ」

目線を逸らしながら消え入りそうな声でそうつぶやくと笠松は頭にはてなを多数浮かべながら相手を見つめて再度質問を投げかける。

「止まんねぇって、なんだよ」
「だ、っから」
「うわっ」

どさり、目の前が暗転すると笠松は唐突の頭痛に顔を歪めながら目を開く。
そこには天井と相手しか写っておらず、何が起きたのか理解するまでに至らずにぽかんと相手を見詰める。

「・・・まさか、これでもわかんねぇとか言わねぇよな?」
「は・・・?なんだよわかんねぇよ」

あーもういいや、だるそうな青峰の声が上から降ってくると何がいいんだよ、と告げようとした笠松の唇が青峰の口によって塞がれる。
啄むようなキスを繰り返すと物足りなさを感じた青峰がぬるりと笠松の口内を侵そうと舌を捻じ入れ、深く味わうように角度を変えて呼吸をする間も与えずに逃げようとする相手の顎を掴む。

「んんっ・・・ん、ふ・・・」

鼻から漏れるような甘く心地の良い声を耳にすると満足げに唇を離してやり、相手の頭を撫でる。

「ん・・・わかったか?もう止めらんねぇよ。あとこれアンタのせいだから」
「はっ・・・ぁ、っざけんな・・・し」
「とかいって、ノリ気なんだろ」

息を乱された笠松は青峰の服を強く掴んで離さずに涙目でキツく見上げては肩を上下させる。
それを視界に入れるとマジ可愛い、とだけ呟いて顔を近づける。

「・・・なぁその顔、マジで襲ってほしいワケ?俺止めろっつっても止めらんねーけど」
「はっ・・・今更止めろなんて言って止める気あんのかよ、狼サンよ」
「わかってんじゃねーか」

くす、と鼻を鳴らすと一匹の狼はまた相手の唇に深くキスを落とす。



とある夏休みの、とある一日。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ