排球部と
□一歩を踏み出す勇気
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私とバレー部の日向くんは、現在微妙な距離を保っています。
クラス中に日向くんが私のことを好きだっていう噂が流れてて、実は胸中では私も日向くんのことが好き。
でも、そんな噂信用しきって告白なんてできっこなかった。
だから、最近日向くんと話すこともなければ、目を合わせることもない。
進むには、勇気が必要だっていうのは分かってる。
分かってるけど、私にはその勇気が足りない─────。
*
「委員会を決めるぞ〜。」
先生のそんな言葉と共に、委員会決めは行われた。
「まず男子。誰か挙手しろ。」
誰も挙げなかった。
そんなの当たり前だ。
だって、委員会なんて面倒くさい仕事、誰だってやりたくないもの。
でも、人は面倒くさいものは人に押し付けたがる生き物で。
「翔陽〜。やれよ〜。」
「いつかのバレー部エースはこれくらいさらっとこなせなきゃなれねえだろ〜。」
散々皆に言われて、日向くんが無理やり委員会に入ることになった。
「次女子〜。挙手しろ。」
当然、誰もいない。
女子は、男子のように、推薦もしようとはしなかった。
……………日向くんとの、この微妙な関係を終わらせるには、ちょうどいいかもしれない。
この機会に、日向くんと仲良くなれれば…………!
でも、肝心の手が挙がらない。
皆の沈黙の中で、ひとり手を挙げるのが嫌。
怖い。
私の心がそんな感情で埋まり始めたその時。
「先生〜! 私、谷上さんがいいと思いまーす!」
私の親友が、手を挙げて言った。
その親友は、私の気持ちを唯一知っている人で、きっと意気地なしの私を助けてくれたんだ。
皆が一斉に自分の方を向いている中、私は、消え入りそうな声で、こう言った。
「………………私、やります。」
でも、消え入りそうな言葉でも、勇気の塊なの。
あなたと距離を縮めるための、一歩を踏み出す勇気。
*
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