排球部と
□意識してるって気付かれたら終わりだね
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私達は、所詮は幼なじみ。
それ以上の関係になることも、それ以下の関係になることも、許されないの。
そんなあなたに、意識してるって気づかれたら終わりだね。
何故なら、私の幼なじみは、とっても優しくて、でも少し意地悪で、鋭いから。
今日も、バレないように、自然の笑顔を作ってみせる。
「大地、おはよ!」
「おはよ、紫歩。」
挨拶を軽く交わすと、私たちは並んで歩き始めた。
小さな頃から、登下校はいつも一緒。
中学校の時も、高校の時も、大地と同じ、バレー部に入った。
「こないだの練習試合、いい感じだったって武田先生言ってたよ。レシーブもちゃんと回ってて、いつもより進化した感じって。」
「そっか。そりゃよかったよ。レシーブ俺とノヤだけじゃちょっとキツいからな。」
苦笑いを作ってみせる大地に、私はまた苦笑いを返す。
「いいじゃん。日向くんも、月島くんもだいぶうまくなったんだし。」
「………………だな。」
という風に、私はバレー部のマネージャーをしているうちにバレーにどっぷりとはまってしまっている。
登下校は、大地とバレー談義をしていると、すぐに終わるのだが。
今日は、そううまくいかなかったらしい。
「紫歩ってさ………。俺に素の姿見せてるか?」
大地の言葉に、私はびくりと肩を揺らした。
「………………素の私…?」
大地の言いたいことは、何となく分かる。
最近、意識して大地に話しているのが、ばれてしまったのだろうか。
「何か、いつもみたいに笑顔じゃないし。何か意識してる作り笑い? みたいな。」
………………………鋭い。
何で表情を見ただけでそんなに分かるのかが不思議だ。
「……………………そんな事ないよ。大地には、いつも素の私でいるよ。」
………………………嘘、だよ。
今まで、こんなに悲しいセリフ、言ったことなかったな。
今まで、こんなに悲しい嘘、ついたことなかったな。
言えば心に傷がつき、
言わずとも心に傷がつく。
こんな気持ち、気付かれてしまったら一瞬で消し飛んでしまうことなんて、分かってる。
分かってるから、もっと心にこの気持ちを押しとどめていたい。
だから、理解しないで。
まだ、気付かないで。
意識してるって気付かれたら終わりなんだ。
*
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