排球部と

□逃げられない離れられないでも構わない
1ページ/1ページ


「紫歩。」


「ん? どうしたの研磨。」


ある昼下がり。


お弁当を食べ終わった私は、窓際で日向ぼっこして、眠りに落ちようとしていた。


だが、そんな眠気は幼なじみで、且つ私の好きな人である研磨の声によって一瞬で消し飛ばされた。


「…………………ちょっと、来て。」


「…………………えっ?」


研磨の言葉に、私の声はひっくり返った。


いつも休憩時間なんて教室から出ようとしない研磨が、教室から出ようと誘ってきたのだ。


「い、いいけど……………。」


私は、ガタンと椅子から立って、研磨に着いていった。





「研磨……………? 何で?」


私は、着いた教室を目の前にして、第一声をあげた。


私が研磨に連れてこられたのは、視聴覚室。


誰が見ても、暗くて怖い部屋。


私は教室で日向ぼっこしてたのに…。


何でこんな暗い部屋に行くはめに…。


「いいから。」


研磨は、いつもより機嫌の良さそうな口調で私を急かした。


ドアには鍵はかかっていなく、簡単に入ることができる。


私が教室に足を踏み入れたその途端。


カーテンに囲まれた真っ暗な部屋が、夜空となって、星を瞬かせていた。


「…………………わあ……! 綺麗…。」


私は、思わず感嘆をあげてしまった。


どうしてこんな現象が起こっているのかは分からない。


でも、そんな事はどうでもよくなってしまう位に、この部屋は綺麗だった。


「これ、どうしたの? 研磨。」


「クロが小さい頃に貰った星座の勉強用のやつなんだって。でもクロはいらないって言ってたから、俺がもらったんだ。」


「………………黒尾さんが…。」


「女の子ってこういうの、好きなんでしょ? リエーフが言ってたよ。」


「うん、すっごく綺麗……………。」


神秘的な空間に、ため息が出るくらいに綺麗だと思ってしまう。


研磨の方をちらりと盗み見する。


どれだけ長い時間一緒にいても、研磨の思っていることは、よく掴めない。


今だって、ボーッとした顔でただただ視聴覚室に煌めく星を見ていた。


私が見つめていると研磨もこちらを向いた。


パチリと、目が合う。


何故だか逸らすことができなくて、顔の温度が急上昇していく。


「? どうしたの紫歩。」


キョトンとした顔の研磨。


「───────ううん、何にも。」


乙姫様と彦星様は、こんなに綺麗な星の近くで、一年に一度の再開をする。


これが、私たちの第二の始まりなら?


そう思うと、


逃げたくても、


離れたくても、


できないよ。


私の勝手な想像だけど。


それでもいい。


自分で満足して、終わらせるのが私の恋だから。


研磨には、いつか私よりも綺麗な女の人を見つけて幸せになってほしい。


でも、


勝手な私は、


逃げられない、


離れられない、


でも、構わないんだ。





排球部と
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ