排球部と
□逃げられない離れられないでも構わない
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「紫歩。」
「ん? どうしたの研磨。」
ある昼下がり。
お弁当を食べ終わった私は、窓際で日向ぼっこして、眠りに落ちようとしていた。
だが、そんな眠気は幼なじみで、且つ私の好きな人である研磨の声によって一瞬で消し飛ばされた。
「…………………ちょっと、来て。」
「…………………えっ?」
研磨の言葉に、私の声はひっくり返った。
いつも休憩時間なんて教室から出ようとしない研磨が、教室から出ようと誘ってきたのだ。
「い、いいけど……………。」
私は、ガタンと椅子から立って、研磨に着いていった。
*
「研磨……………? 何で?」
私は、着いた教室を目の前にして、第一声をあげた。
私が研磨に連れてこられたのは、視聴覚室。
誰が見ても、暗くて怖い部屋。
私は教室で日向ぼっこしてたのに…。
何でこんな暗い部屋に行くはめに…。
「いいから。」
研磨は、いつもより機嫌の良さそうな口調で私を急かした。
ドアには鍵はかかっていなく、簡単に入ることができる。
私が教室に足を踏み入れたその途端。
カーテンに囲まれた真っ暗な部屋が、夜空となって、星を瞬かせていた。
「…………………わあ……! 綺麗…。」
私は、思わず感嘆をあげてしまった。
どうしてこんな現象が起こっているのかは分からない。
でも、そんな事はどうでもよくなってしまう位に、この部屋は綺麗だった。
「これ、どうしたの? 研磨。」
「クロが小さい頃に貰った星座の勉強用のやつなんだって。でもクロはいらないって言ってたから、俺がもらったんだ。」
「………………黒尾さんが…。」
「女の子ってこういうの、好きなんでしょ? リエーフが言ってたよ。」
「うん、すっごく綺麗……………。」
神秘的な空間に、ため息が出るくらいに綺麗だと思ってしまう。
研磨の方をちらりと盗み見する。
どれだけ長い時間一緒にいても、研磨の思っていることは、よく掴めない。
今だって、ボーッとした顔でただただ視聴覚室に煌めく星を見ていた。
私が見つめていると研磨もこちらを向いた。
パチリと、目が合う。
何故だか逸らすことができなくて、顔の温度が急上昇していく。
「? どうしたの紫歩。」
キョトンとした顔の研磨。
「───────ううん、何にも。」
乙姫様と彦星様は、こんなに綺麗な星の近くで、一年に一度の再開をする。
これが、私たちの第二の始まりなら?
そう思うと、
逃げたくても、
離れたくても、
できないよ。
私の勝手な想像だけど。
それでもいい。
自分で満足して、終わらせるのが私の恋だから。
研磨には、いつか私よりも綺麗な女の人を見つけて幸せになってほしい。
でも、
勝手な私は、
逃げられない、
離れられない、
でも、構わないんだ。
*
排球部とへ