排球部と

□きみを守るのも傷つけるのも他の誰かで
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ある昼休み。


俺が体育館の裏でうたた寝をしていると。


「翔陽!」


俺の大好きな、可愛くて元気な声が、俺を呼んだ。


俺が顔を上げると、紫歩は満面の笑みで立っていた。


「どうしたんだ紫歩?」


俺の問いに、紫歩はこれまた満面の笑みで俺に言った。


「私ね、影山くんと付き合うことになったんだ〜!」


その瞬間、俺の心に、大きな石みたいなものが詰め込まれたように、息ができなかった。


こんな時でも、幼なじみという存在は、笑顔で、祝福しなければならないというのは、馬鹿な俺でも分かり切っていることだった。


その相手が、どんなに心から想っている相手でも。


「そっか! よかったじゃん!」


「えへへ、ありがと! この事言うの、翔陽だけなんだよ! 翔陽は私の大事な幼なじみだもんね!」


こんな所で、特別扱いするなよ。


余計に、虚しくなるから。


こんな所で、幼なじみを強調するなよ。


余計に、悲しくなるから。


他の人に言わないんなら、どうして俺に言うんだよ。


───────それが、幼なじみの使命だということも、痛い程に理解した。


「そっか。幸せにな、紫歩!」


俺は、無理矢理な笑顔で、恋を祝福する。


きみは、心からの笑顔で、恋を祝福される。


「ありがと、翔陽!」


そう言って走り去っていった紫歩の背中が、変に遠く見えた。


もうこれからは、俺に頼ることもなくなる。


俺は、紫歩を守ることも、傷つけることもできない。


だって、既にもうその使命は俺から影山にバトンパスされているから。


「───────バイバイ。」


俺の恋心に。


きみを守るのも傷つけるのも他の誰かで、


俺を守るのも傷つけるのも他の誰か、


と言う引き裂かれた運命なら。


それに素直に生きよう。


俺は、目尻に微かにたまった涙を、制服の裾でゴシゴシとこすった。





排球部と
 

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