探Q dream

□となりの七海さん:3
1ページ/16ページ

次の日。
春葉は七海に言われた通りに、いくつか自分の行動を変えた。

ひとつは店の営業時間。
客向けには一時的な店の都合ということで、前後に短縮することにした。
本当は事が解決するまで休業することも提案されたが、偶にお店に来る今の店主に無用な心配をかけたくなかった春葉が断ったのだ。
だから、店主にも本当のことは言わず、適当な理由をつけて納得して貰うことにした。

七海に言われた通りに営業時間を変えることで、店までの往復路は人が多い時間帯を歩くことができた。
それから、なるべく人込みに紛れて移動することや、音の鳴る防犯グッズをわかりやすく鞄から下げておくことなどのアドバイスを貰い、それらを素直に聞き入れた。

どれもシンプルな提案だったが効果は十分で、おかげで春葉は例の男を視界にいれることもなく、今日は店まで無事に辿り着くことができた。

七海の言っていた通り、あの男は人の目が気になって、来るに来れないのだろう。

とは言え、春葉の携帯電話には彼からの執拗な着信は続いており、メールも大量に届いていた。あの男がまだ諦めているわけではないことはわかっていた。
今は「電話に出なくていい、メールは読まなくていい」と言う七海の言葉に春葉は大人しく従っているが、まだ全てが安心とは言えない状況だった。

(それにしても…七海さんって本当に頼りになる人だなぁ…)

春葉は店の窓から見えるDDCの大きな建物を見つめた。
このエリアでは一番大きな建物で、DDCの活躍は春葉のような一般市民もよく知っている。しかし、いくら自分の勤めている店が近いとは言え、そんな人たちとは一生縁が無いと思っていたのだ。まさか、そこの探偵が隣人で、こんな風に世話になるとは夢にも思っていなかったことだった。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ