金田一 short
□rose bathtime
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「……ずるいです。遙一さん。」
「…何がです?」
ぽつり、と拗ねたような口調で零れた言葉。
高遠と春葉はゆったりとした2人がけのソファに並んで、就寝前の穏やかな時間を過ごしていた。
高遠はマジックに使っている道具の手入れをしながら、春葉はその様子を見ながら会話をしていた。
その最中、冒頭の言葉。
「薔薇風呂。」
「…は?」
「今の話。薔薇十字館で薔薇風呂に入ったんですよね?」
ああ、と高遠は自分がしゃべっていた内容を少し巻き戻してみる。
高遠が春葉に自分が関わった事件について話すことはよくあることだった。
一般人からしてみるとおよそ物騒な内容ではあるが、高遠にとっては世間話のようなものだった。
今も高遠は道具の手入れをしながら、先日の薔薇十字館の事件について話をしていた。
高遠自身はそのときのトリックについて話をしていたつもりだったのだが、春葉が注目したのはどうやらそれではなかったらしい。
「入りましたよ。そのとき館に招待されていた写真家と金田一君の3人と一緒に。」
色気なんかゼロですよ、と高遠はやはり何でも無い風に話す。
その様子を見て春葉は少し怒ったような顔をした。
ソファに置いてあったクッションを掴み、抱え込む。