金田一 short
□保健室に残る欲
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「すいませーん、怪我人なんですけどー。」
6限目が終わり、学生達のお待ちかねの時間である放課後。部活動や課外活動、勉学や遊び等、学生達の個性が色濃く出る時間帯。
そんな時間の秀央高校の保健室に1人の男子学生が訪ねてきた。その上履きの色から、彼がその学校の3年生だということがわかる。
しかし、彼が訪ねた保健室にいるはずの白衣の教師の姿はなく、男子学生と同じ制服を着た少年が座って本を読んでいた。
「…あれ?先生は?」
「……すいません。今日は保健の先生はお休みなので僕が代わりに対応します。」
そういうと少年は、本を閉じて事務的で淡々とした動作で救急箱を手に準備を始める。学生達の憩い場である保健室も、彼の放つ雰囲気によって居づらい空気がある。
「…怪我、見せて下さい。」
その空気に男子学生も気が引けていたが、無言で治療の準備を進める少年に慌てて声をかけた。
「あ!ごめんな、怪我は俺じゃないんだよ。この子の手当てお願い。」
そう言って男子学生は後ろで待機していた女子学生の手を引っ張り、少年の前に連れてきた。