金田一 short

□死神と傀儡師の輪舞
2ページ/13ページ

ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー

ピコン、と机の上に置いていた携帯電話から通知音が鳴る。

「遙一さんだ!」

仕事から帰宅し、食事もお風呂も済ませくつろいでいた春葉はすぐに携帯を取る。

『今日戻りました。あと1時間くらいでそちらに着きます。』

簡素な文だったが、彼らしい文面に春葉は顔を綻ばす。
もう少しで会える。
そう思うと嬉しさがこみ上げてきて、いてもたってもいられない。彼が喜ぶように部屋には季節の花をたくさん生けて飾った。
長かったか、短かったかは人それぞれだが、2週間ぶりに会う恋人の姿を想像して胸が高鳴る。

ーガチャ

「あっ!」

玄関のドアが開く音が聞こえた。
その音に春葉は高遠が早く着いたのだと思い、嬉々として玄関へ向かう。

「おかえりなさ、い…って…え?」

「こんばんは。秘密のお姫様♪」

すっかり高遠だと思っていた春葉は玄関に立つ男を見て立ち尽くす。
少し癖っ毛の長身の男。会ったことも見たこともない男に、鍵をかけていたはずの玄関を開けられ、疑問と恐怖で身体が動かなかった。
男は春葉を見ながらニコニコと笑っている。笑っているはずなのに、嫌な威圧感を感じて足が自然と後ろに下がった。

「あっ…だ、誰なの…?あなた…。」

かろうじて出てきた春葉の質問には答えてもらえなかった。
男は春葉を頭の先から足まで余すところなく、品定めするかのように見つめた。
それから男の後ろでガチャっと鍵が回される音が聞こえて、春葉の恐怖心は増幅される。

「い、いや!!」

とにかく男から離れようと春葉は自分の部屋の奥へと駆け出す。

「ははは!逃げたって無駄だよ〜。」

ーガシッ

すぐに後ろから男に羽交い締めにされる。

「いやぁ!はなして!ん、ぐぐっ!」

声を上げると男の大きな手で口を塞がれる。
なおも身体を大きく捩らせて抵抗すると、自分の首元にキラリと光る銀色の物体を認めて、身体の動きが停止する。女の首など切り裂くことが容易い、大きな刃。

「〜っ!」
「全く、そんなに暴れられると面倒なんだよね。死にたくなかったら大人しくしててくれない?」

ね、わかった?と今度は子どものような笑顔で問う男にふるふると首を縦に振る。

怖い、と心の中でもうすぐ来るであろう恋人の名前を呼ぶが、この状況では一分後の未来に自分の命があるかどうかも今はわからない。
春葉の両手を後ろ手に掴んでいる男の力はあまりにも強く、隙あらばなどと考えることは得策ではないことがわかる。今はこの男の言うことを聞くしかない。

「んぅ!」

ドサっとベッドにうつ伏せに押し付けられる。
背中で布が切られる音が聞こえたかと思うと、着ていたネグリジェがはらりと布クズになって、落ちた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ