金田一 short
□保健室に残る欲
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「…佐倉、大丈夫か?」
「…先輩…あ、ありがとうございます…。」
入り口から入って来た女子学生は1年生で、おずおずと男子学生に手を引かれるままに中に入る。
彼女と保健室にいた男子学生の目があう。
「た、高遠君…!」
「………。」
驚く女子学生とは対照的に、高遠と呼ばれた男子学生のほうは無言だった。
「高遠…。高遠って4年ぶりに満点合格したっていうやつのことか?なんだ佐倉、知り合いだったのか。」
お前特Aクラスでもないのになぁ、と男子学生は呟く。しかし、女子学生のほうは予期しない人物がそこにいたため、未だそわそわしている様子だった。
「…後は僕がやっておくので先輩は帰ってもらって結構ですよ。」
若干棘を含んだような物言いだったが、男子学生は気にも止めず女子学生の心配ばかりをしていた。
「佐倉…本当に大丈夫か?何かあったら言うんだぞ?鞄とか持てなかったから俺が家まで送って行ってやるから…。」
「先輩、心配しすぎです!少し切っただけなので大丈夫ですよ。」
相手は上級生であったが、過度な心配を示すその態度に女子学生は若干苦言を漏らした。女子学生のほうもそわそわしており、早くどこかに行ってほしいという雰囲気を醸し出している。
「そうか…じゃあ先に部活戻ってるから、手当てしたら戻るんだぞ!」
大丈夫だと言う春葉にその男子学生は渋々戻って行った。
ーぱたん。
嵐が去った後のように、2人が取り残された保健室には静寂が訪れた。