金田一 short

□嫉妬の操り人形
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こんな風に高遠と霧島の2人が同居するマンションに来るのは最近になってからだった。以前は高遠が霧島から自分を隠していたこともあり、会うときはもっぱらこっちの家に限ったことだった。

しかし、霧島に自分と高遠の関係がばれて一悶着あり、更にその後も一悶着あり…と何故か奇妙な縁で3人で一緒にいることが以前よりも多くなった。
そして今日も1週間ほど『仕事』をしていた2人のために料理を振る舞いに来ていたのだ。

最悪な出会いだった霧島との関係は今や良好だった。こうやってたまに顔を合わせるときは喜んで歓迎してくれるようになったし、普通に会話もできるようになった。たまにつかみ所の無いような言動があるが、霧島と会うときは必ず高遠が一緒なのでそれは彼が軽くかわしてくれていた。

ちらり、と横に立って作業をする高遠を見る。ラフな格好をして作業をするその姿はあまり見ることのできない姿なので、ずっと見つめていたいと思う気持ちが湧く。
あまり見ない、というのは先ほどのような姿もそうだった。所謂『嫉妬』と表現される感情。

高遠という世間様からしてみると特殊な恋人のおかげでそもそもの交友関係自体が広くなかったが、職場にも男っ気は少なかった。特に嫉妬心を抱くような相手がいなかったとも言えたが、最近は霧島との関係を気にしているような節があった。

(さっきのも…少し焼きもち焼いてくれたのかな…。)

そう思うと高遠には悪いが少し嬉しい気がした。彼からの愛情は一身に受けていたが、あのように自分のために怒った姿を見るのも別の形で現れる愛情として受け取れた。

「……春葉。沸騰していますよ。」

「あ!本当だ…!」

考え事をしてしまったせいで、目の前の鍋が沸騰していることに気付かなかった。慌てて火を弱める。

「気をつけて下さいね。」

「ご、ごめんなさい…!」

やんわり微笑むいつもの高遠にほっとする。先ほどのことはもう何とも思っていないのだろう。
以前嫉妬心に刈られて自暴自棄になった自分が恥ずかしいと思うくらい高遠は大人だと思った。
再び野菜を切り始める高遠を見て、しっかりしなければと意識を料理へと集中させた。
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