2014【2】

□小さな贈り物
1ページ/1ページ



おめめがさめたら、
おとーさんとおかーさんがうごきませんでした。

わたしはかなしくなりました。
からからになるくらい、なきました。

たくさんたくさん、なきました。
けれど、こえはだしませんでした。
おこられちゃうから。



「ガキ、何してんだよい」
「おじさん、だぁれ?わたし、***」
「……マルコだよい。で、何してんだこんな所で」
「まるこ。んとね、おはか、つくる」



おとーさんをうめてあげようと
わたしは、あなをほりました。
でも、じめんがかたくて、たいへんです。

ちいさなすぷーんで、あなをほります。
なかなかうまくいかないです。

がんばっていたら、うしろからこえをかけられました。
みたことない、おおきなおじさんです。
まることいったおじさんの、あたまのうえには、ぱいなっぷるがありました。



「その子の親がね、流行り病で逝っちまったのさ」
「…なるほどねい。誰か引き取ってやらねぇのかい?」
「見ての通りさ。皆自分が生きるのに精一杯なんだ」
「……、」



まるこに、そんちょーさんがはなしかけました。
わたしは、ばかだけど、しってるんです。
もう、ひとりぽっちだって。

おかーさんのごはん、おいしかったな。
おとーさんのかたぐるま、たのしかったな。




「…う、っ…ふぅ…」
「ガキ……***だったか」
「まるこ。なあに」
「貸せよい」



ぼーっとしながら、あなをほってると
まるこがとなりにやってきました。
わたしのてから、すぷーんをとりあげました。



「…これじゃ掘れねぇだろい?」
「おおきいの、おもくてもてないの」
「仕方ねぇな」
「なにするの」
「あん?お袋さんと親父さんの墓ぁ作るんだろい?」
「?…うん」
「手伝ってやるって言ってんだよい」



まるこは、あたまをがしがしかきながら
そんちょーさんにしゃべるをかりにいきました。



「ほら、やっちまうぞい」
「……うん、」
「なんだよい」
「ありがと」
「ガキは素直に甘えてりゃいい」



なんだか、むねのあたりがあたたかくて
まえがみえなくなりました。

どろだらけのてで、おめめをぐしぐしこすると、
まるこはやめろといって、じぶんのおようふくで、おめめをふいて、あたまをなでてくれました。


おとーさんやおかーさんたちいがいに
やさしくされたことなんてなかったから、
どんどん、まえがみえなくなりました。



「…っ、ふ…」
「…***、我慢なんかすんじゃねぇ。泣きたい時ァ、声出して泣け。誰も叱らねぇよい」
「っ、うえええええん!おと…さ!おかーさ……!」



いっぱいいっぱい、なきました。
こんどはおおきなこえで、なきました。
まるこはずっとあたまをなでてくれてました。

なくのがおわって、
まることふたりで、おはかをつくりました。



「…こんなもんかねい」
「まるこ、ありがと」
「あぁ、じゃあおれは行くよい」
「う……ん、ばいばい」



まるこは、ここのひとじゃありません。
ばいばいするのはわかってました。

でも、でもちょっとだけ、…さみしいです。

すかーとをぎゅっとにぎって、したをむいて
まるこにばいばいをいいました。
ないたら、だめだとおもいました。

まるこをこまらせたら、いけません。



「***」



まるこのやさしいこえが、きこえました。
かおをあげたら、しゃがんだまるこがいました。

こまったようなかおでわらって、あたまをなでてくれました。



「…***、何か言いたい事あんだろい?」
「ない。なにもない。まるこ、ばいばい」
「…我慢はするなって言ったよい、おれは」
「っ、ま…るこ………てって…」



のどがひりひりして、こえがでません。
それでもまるこは、まってくれてます。



「うん?」
「まるこ、わたしもつれてって…ひとりに、しないで」
「…良く出来ました」
「わあ!」



にっこりとわらったまるこは、
わたしのあたまをくしゃくしゃにして
かんたんにからだをもちあげました。

まるこのくびにしがみついて、
あるくおとをきいていました。

しばらくいくと、おおきなしろいくじらさんがいました。




「今日からこのモビーが***の家だよい」
「わたしの…おうち」
「あぁ、兄貴達もたくさんいる。もう寂しくねぇよい」
「おにーちゃん、いっぱい」



わたしをすこしおろして、めがあいました。
やさしくわらうまるこは、おとーさんみたいです。



「ぎゃー!ちょっとマルコ!何幼女誘拐してん?!」
「あ?サッチうるせぇよい。親父にゃ伝えてある」
「…おにーちゃん?」
「…!何この子かわいい…!」
「可愛いだろい、妹になるんだよい」
「…誕生日に幼女拐ってくるなんて、やるわぁ…」



まること、ぱんみたいなおにーちゃんが
けんかをはじめました。
きょうはまるこのたんじょーびみたいです。



「まるこ、まるこ」
「ん?なんだよい」
「おめでと」
「…っ?!」
「うわぁ…破壊力抜群…」
 
 

おめでとうといって、
まるこのほっぺにちゅーをしました。

ぷれぜんとです。
まるこのめがおおきくなって
ちいさなこえで、ありがとよい、といいました。

きづいたら、まわりにはたくさんひとがいました。


おとーさんも、おかーさんも、もういないけど
たくさんの、おにーちゃんができました。


まることあえて、よかったです。
ありがと、まるこ。
おたんじょーび、おめでと。







【小さな贈り物】
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ