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□王子様とお姫様
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「紫姫!会いたかった…」

「遊?どうしたの?」

「用はないよ?ただ会いたかっただけ」



鹿島は彼女に後ろからぎゅうっと抱きついたままそう言っていた。
ちなみに紫姫はそれを気にする訳でもなくされるがままでいた。



「鹿島!いいところに!見ろ!こいつが王子様だ!!」



すると鹿島の友人の御子柴がやって来て鹿島を指差してそう言った。



「どうもー。2−Gの鹿島遊です。演劇部所属ですっ!」

「もしかして演劇部だから王子様?」

「いや、それもあるけどよ…」



御子柴がそう言っていると鹿島くーん!と彼女の名前を呼びながらこちらへ来る女子生徒がいた。
そして鹿島はその彼女へ甘い言葉を投げかけていた。
それを見ていた佐倉や野崎は驚いているようだったが御子柴と紫姫は慣れているのか特に反応はしていなかった。
むしろ紫姫は佐倉と野崎をじっと見つめていた。



「あ。紫姫、こいつらは野崎と佐倉」

「2−Bの野崎だ」

「あっ、2−Aの佐倉千代です!」

「2−Cの都紫姫です。遊と同じく演劇部所属で家庭科部にも入ってます」

「え?兼部してるの?」

「うん。家庭科部はそもそもたまにしか活動ないからねー」



ふにゃり、と笑みを浮かべる紫姫を見て佐倉はどきっとしていたのだが、御子柴はそれに気付かず続けた。



「ちなみに紫姫は学園のお姫様だぞ」

「えっ!そうなの!?」

「それやめてよー…。私なんか可愛くもないしお姫様なんて恥ずかしいもん…」

「紫姫も行く?」

「へ?何処に?」



それから紫姫は話しかけてきた鹿島の方へ行ってしまっていた。



「紫姫は鹿島の幼馴染ですげぇあいつが溺愛してんだよ。王子が溺愛してるからお姫様」

「あ、なるほどー!」

「あいつは他にも異名があってな…」

「お姫様だけじゃないのか?」

「ゆーう。そうやってサボるとまた先輩に怒られるよ?いいの?」

「う」

「もしかしたら先輩に嫌われちゃうかもなー。いいの?」

「…よくはないけど…」

「じゃあ部活行こう?それに私も遊が王子様役やってるところ見るの大好きだから見たいなー…?」

「…紫姫がそう言うなら仕方ないね…今日は部活に行くよ」

「ホント?嬉しいなー」

「…あれは?」

「はたから見れば所謂飴と鞭だな」

「ああやって鹿島を説得したり、立てたり出来るのと家事能力の高さから男子は紫姫を学園のお嫁さんと呼んでいる」

「(男子達影で色々異名つけ過ぎじゃない!?)」

「ちなみに一部の男子内で行われたお嫁さんにしたい同級生をアンケート調査した結果、紫姫が断トツでトップに立ってるんだぜ!」

「ほう…知らなかったな」

「ちなみに俺は一年の時に調理実習で同じ班だったが…皆同じ材料で料理を作っているはずなのに紫姫の物は比べ物にならないくらい美味かったぜ」

「みこりんは紫姫ちゃんと仲良しなの?」

「まぁな。鹿島と仲良くなってから紹介してもらった」

「しかも名前呼びか…」

「まぁ俺は鹿島のが移ったんだけどな。あとは演劇部に同じ名字の3年がいるらしいから名前で呼ばれてるしそっちの方が慣れてるんだとよ」

「あ。御子柴くん、遅くなってごめんね。はい、貸してくれてありがとう」

「別にジュース代なんて返さなくていいって」

「ダメ。一時借りる、って事で御子柴くんも納得したでしょ?」

「そりゃ…そうだけどよ…」

「だからいいの。ね?」

「ぉ…おう…」



紫姫の言葉に圧倒された御子柴は素直に差し出された小銭を受け取った。
それをぼんやりと見ていた佐倉を紫姫はじっと見た後に再びふにゃりと微笑んだ。



「佐倉、さん」

「はっ、はいっ!」

「私と…お友達になってくれる…?」

「勿論!!」

「えへへ…よかったぁ。佐倉さん可愛いなーって思ってじっと見ちゃったから嫌がられてないかなーって思ってたの」

「紫姫ちゃんの方が可愛いよ!!」

「可愛くないよー。…ね、千代ちゃんって呼んでもいーい?」

「うんっ!」

「うん、じゃあ千代ちゃんね」



にこにこと笑いながら差し出された手を握ると佐倉はぐるっと御子柴の方を向いた。



「みこりん!紫姫ちゃん凄い癒し系だよ!!」

「そう!千代ちゃんわかってるねー。紫姫は雰囲気とか行動とか笑顔の感じが癒し系なんだよね」

「うん!それに凄い手握ってて落ち着いちゃう…」

「え?そんな事ないよぉー…」

「あるよ!!」



それから鹿島と佐倉で何故だか紫姫の印象の話で盛り上がっていた。
その中心では紫姫が照れたような、困ったような顔をしていた。



「あ、もうこんな時間か…」

「早くしないと迎えが来るぞ」

『えー!鹿島くんもう行っちゃうのー?』



あれからしばらくすると鹿島は時計を見てそう言っていた。



「お迎えって?」

「あいつサボり魔だからな。演劇部の部長直々に毎日来るんだよ。
すげぇぞー演劇部のお迎えは。よく見てろ」

「うーん…千代ちゃんには刺激が強いような気も…」

「鹿島あぁ!!てめぇ遅れてんじゃねぇよ!!!」



そんな事を言っていると一人の男子生徒が佐倉達の前を走っていき、やがて鹿島に跳び蹴りをくらわせた。



「力技だから」

「(バイオレンス…!)」

「邪魔したな」



その生徒は佐倉達にそう言うと鹿島の首根っこを掴んで廊下をずるずると引きずっていった。
途中でそんな状態でも女子生徒を口説いていた鹿島を男子生徒がジャイアントスイングしていたりもした。



「もー…部長、周りの人が困ってますよ…ね?」

「ああ…。紫姫、お前用事は?」

「さっき終わりました」

「そうか。じゃあ行くぞ」

「はい。じゃあね、千代ちゃん、御子柴くん、野崎くん」



死にかけの鹿島とは裏腹ににっこりと笑みを浮かべながら手を振って紫姫は去っていった。



「…紫姫ちゃんって実はある意味最強な気がしてきた」

「まぁ幼馴染があんなされて落ち着いてられるのは確かに普通じゃねぇな」



うんうん、と御子柴が頷く中佐倉と野崎は未だに引き攣ったような顔をしていた。




「紫姫、紫姫。そろそろ片付けしないと」

「え?あっ!もうこんな時間…!」

「ホント紫姫は集中すると周りの音聞こえなくなるね。そういうところも好きだよ」



そう言いながら鹿島は紫姫にぎゅうっと抱き着いた。



「もー…遊、抱き着かれてたら片付け出来ないよ」

「ごめんごめん。じゃあ私大道具の方手伝ってくるね」

「うん」



紫姫は作業途中のものがあと少しできりがつきそうだったので急いで手を動かした。



「よし、明日はここからだ…」



とりあえずの区切りがついたので道具を片付け始めた。
しばらくすると部活が終了したので部員達で部屋を出ていった。
紫姫は途中まで部員達と帰っていったが、駅の近くで分かれて徒歩で家に帰った。





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とりあえずヒロインちゃんは家事能力がものすごく高いです。
料理もお裁縫もどんと来いです。
そして太ってる訳じゃないけど手はふにふにしてて癒し系な手触りです←


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