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□お姫様と先輩
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「紫姫いるか?」

「堀先輩?どうしました?」

「ああ、今日は鹿島もメインの役者も来れなかったり遅れたりするらしいから買い出しに行こうと思ってるんだが…紫姫の方は何か買い足すものあるか?」

「そうですねぇ…あ、今回の衣装用の布と糸が少しなくなりそうですね…」

「わかった。じゃあ授業終わったら一度部室来てくれ」

「はい、わかりました」

「おう、じゃあな」



私がそう返事をすると先輩は教室を出ていった。



「紫姫ー!」

「遊?どうしたの?」

「今堀先輩来てたよね!?」

「あ、うん」

「紫姫の所には来て何で私の所には来てくれないの!!」

「え…多分、今日は遊が部活休むって連絡入れてたからじゃないかな…。
今日の部活の事についての連絡だったし…」

「何だったの?」



遊はちょっと拗ねたような顔をしながらそう聞いてきた。
私はというとその拗ねた顔が可愛くてちょっと笑ってしまったんだけど。



「今日は遊だけじゃなくて先輩達も来れない人が多いから買い出しだって」

「私も行く!!」

「ダーメ。おばさんに怒られちゃうよ?お婆さんの所に荷物届けに行くんでしょ?」

「そうだけど…」

「もう…何があったかちゃんと明日教えるから。ね?」

「…絶対だからね」

「はいはい」



むすっとする遊の頭を撫でながらそう言うと一応は納得してくれたみたいだった。
それから授業を終えて、私は部室に向かった。



「こんにちはー」

「おう、来たか」

「あれ?他の人は…?」

「大道具のやつらには備品の残りを確認してもらってる。紫姫も何が必要か確認してくれるか?」

「はい、わかりました」



堀先輩に言われた通り衣装が置いてある部屋に入って必要そうなものをメモしてからまた部室に戻った。



「堀先輩、確認終わりました」

「おう。量は多そうか?」

「んー…種類は多いですけど量はそんなにないと思います」

「わかった。じゃあ俺と2人で買い出し行くぞ」

「へ?2人で?」

「ああ。大道具の方もそんなに大人数じゃなくても平気そうだしな」

「あ、そうなんですね。わかりました」

「じゃあ部費とってくるから玄関で待っててくれ。すぐ行くから」

「はい」



先輩はそう言って演劇部の部費を管理している3年の先輩の所に向かっていったので私は玄関に行く事にした。



「紫姫、悪い。待たせたな」

「いえ、大丈夫です」

「じゃあ行くか。まずは衣装の方の買い物だな」

「はいっ」



先輩と2人で話をしながら手芸道具を売っているお店に行って布や糸を必要な分だけ買っていった。



「…それにしても凄いな」

「へ?何が、ですか…?」

「いや、そういうただの布が衣装になったりすんのが。
紫姫が入ってから衣装の質が上がってて感謝してる」

「ふふ、それなら嬉しいです。それに私もこうやって衣装作るの楽しいので作る機会を頂けて嬉しいんです」

「それはそんだけの技術があるからだろ。そうじゃなきゃこんな毎回衣装作ってもらったりしてねぇよ」



笑みを浮かべながらそう言われて私は嬉しくて頬が緩んでいた。



「えへへー…」

「…お前ホントわかりやすいよな」

「だって嬉しいものは嬉しいんです!」

「いや、悪くはねぇけどな。お、ここだ」

「何買うんですか?」

「主に工具だな。それとペンキと刷毛」

「はーい」



あまり数はないって言っていたけど、私から見たらこれは結構あるんじゃないかなー…なんて思ったけど堀先輩からしたらそんな事はなかったみたい。
まぁ遊を持ち上げて振り回したりしてるくらいだから力持ちだしね…。
それから学校に戻って各々作業を進めて、下校時刻になってから家に帰った。

…余談だけど翌日になってから遊には何やったの!!なんて物凄く問い詰められてちょっとだけ怖かった。




「あれ?千代ちゃんだぁー」

「あ、紫姫ちゃんっ」

「どうしたの?美術部は?」

「今日は美術部お休みなんだ。それで鹿島くんに大道具の色塗りの手伝いを頼まれて…」

「あー…遊ってばまた女の子達に頼んで仕事増やしたのかな?」

「うん…」

「そっかー…。あ、部長何処にいるか知ってる?」

「さっきあっちいったよー」

「ありがとうー」



その日の放課後、衣装について聞きたい事があるので先輩を探していたら千代ちゃんがいたので挨拶をした。
お手伝いとはいえ千代ちゃんがいるなんて嬉しいなーなんて思いながら堀先輩を探して話をしに行った。
確認が終わってからは私は大道具さんから少し離れた所で衣装作りを進めていた。
ホントは千代ちゃんと話しながらやりたいけど私集中しちゃうと周りの音聞こえなくなっちゃうし何よりペンキで衣装汚すと困るからねー…。



「紫姫、キリがいい所でやめておけよ」

「……」

「…紫姫」

「へ?あれ、堀先輩」

「あれ、じゃねぇよ。キリのいい所でやめろよ」

「はーい」



どうやらまた無反応だった私の肩を叩いてきた先輩にそう返事をすると千代ちゃんの方に声をかけに行っていた。
多分手伝いに来てもらってるしお礼言ったりしてるんだろうなーなんて思いながら私も片付けをした。



「紫姫、帰ろー!」

「…遊、抱き付かれてたら歩けない…」

「だーって紫姫ってば抱き心地最高なんだもん」



そう言って正面からぎゅうっと遊に抱き締められた。



「ゆ、遊…」

「鹿島あぁっ!!」

「ぐふっ!!?」



すると何処からか先輩の声が聞こえたと思ったら私の目の前にいた遊は数メートル先に倒れていた。
…うん、多分先輩の跳び蹴りでもくらったんだなぁー…。



「紫姫、大丈夫か?」

「大丈夫です。歩けなかったくらいなので…遊、ゆーう。大丈夫?」

「せ、先輩…酷い…」

「酷くねぇよ。紫姫、こういう奴ら最近多いから気を付けろよ」

「あ、はい」



会話の内容はごくごく普通なんだけど、先輩は遊の首根っこを掴んで引きずりながら歩いていた。



「じゃあ私はこっちなので。堀先輩、お疲れ様でした。遊、また明日ね」

「俺も今日はこっちだから。じゃあな、鹿島」

「あ、はい。じゃあね、紫姫」

「うん」

「お疲れ様でしたー」



それから遊は駅のホームに入っていった。



「先輩今日は何か用事ですか?」

「まぁ、そんな所だな。紫姫は家どっちだ?」

「あっちです」

「俺も。じゃあ途中まで同じだな」

「そうですね」



なんか2日続けてこうやって先輩と2人で並んで歩くなんて思わなかったなーなんて思ったけど途中でスーパーに寄らないといけない事を思い出したのでそこで分かれる事にした。
今日はお姉ちゃん帰り遅いって言ってたから特売品を買うのは私の仕事だからね。



「じゃあ気を付けてな」

「はい!先輩こそ。それじゃあまた」

「おう、じゃあな」



さて。さくっと買い物して夕飯作らないと。





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鹿島くんもヒロインちゃんも堀先輩は人間的に大好きです。
なので構ってもらえなくて拗ねる鹿島くんと褒めてもらえて嬉しいヒロインちゃん。
そして千代ちゃんと仲良くしたくていっぱいお話したいけど作業中は出来なくてちょこっとしょんぼりしちゃうヒロインちゃんでした。


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