Long

□お姫様と同盟
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『お疲れ様でしたー!!』

「紫姫っ、帰ろ!」

「あ、うん」



その日の部活終わり、遊に話しかけられたので帰ろうとするとメールが届いた。
差出人はお姉ちゃんだったのでそれを開くと私はすぐに携帯の電源を落として鞄に携帯を投げ入れた。
わりと勢いよくそれをしたせいか近くにいた堀先輩はびっくりしているようだった。



「お…おい、紫姫。どうしたんだよ…?」

「遊、この後時間ある?」

「え?うん、あるけど」

「じゃあ私と付き合って!」

「紫姫…!!勿論だよ!」

「鹿島、そういう意味じゃねぇと思うぞ」



私をぎゅうっと抱き締めた遊に向かって堀先輩はそう言った。
見えないけど遊越しに振動がきたから多分頭を叩かれるか何かされていたんだと思う。



「ぷは、遊苦しい…」



私はというと思い切り抱き締められて息が苦しかったので顔を上に向けてそう言うと頬に手をかけられた。



「ん…?」

「私を上目遣いで誘惑するなんて…紫姫はいけない子だね…」

「違うよ…だって苦しかったんだもん」

「あ、先輩も時間があるならどうですか?」

「悪いな、今日は用事があんだ」

「そうですかー…」

「また今度な」



すると先輩は私の頭をぽんぽん、と撫でて去っていった。



「で、どうしたの?」

「…いつもの、苦手な知り合いが家に来てるの…」

「ああ…お姉さんの仕事仲間っていう?」

「そう…だからその人が帰るまで家帰りたくない…」

「じゃあそれまで買い物でもする?」

「うん!遊、ありがとう!!」

「好きなだけお付き合いしますよ、お姫様」

「ふふ、じゃあ行こ?」

「うん」



それから遊と買い物をする為にお店に向かった。



「(にしても…人とはそれなりに仲良くなれる紫姫が苦手にする人ってどんな人だろう…)」



紫姫は何処に行こうかー?なんて言っていたので鹿島がそう考えている事には気が付かなかった。





「遊、遅くまで付き合わせちゃってごめんね?」

「ううん。特に用事もないし、可愛いお姫様の為ならいつでも付き合うよ」

「あはは、ありがとう」

「じゃあ夜も遅いし気を付けて帰ってね?」

「うん。遊も気を付けてね」

「じゃあまた明日ね」

「うん。バイバイ」



それから手を振って遊と分かれて家に向かった。
ちなみに1時間前に携帯の電源を入れるとお姉ちゃんからすでにあの人が帰っているとメールが2時間前にきていた。
ついでに履歴にはあの人からの連絡がきていたけど即座に消した。だって意味のある連絡なんてしてきた事ないもん…!!



「あれ?紫姫?」

「ん?あ、御子柴くん!」

「お前どうしたんだよ、こんな遅くに」

「ちょっと、遊と買い物してたの」

「珍しいな。部活の後に買い物行くなんて」

「うん、まぁ…」

「家、何処だよ」

「え?」

「暗くなってきたし送ってやるよ」

「え、いいよいいよ!」

「いいんだよ。女の一人歩きは危ないからな、甘えておけよ。ほら、家どっちだよ」

「あ…あっち…」

「よし、じゃあ行こうぜ」



それから御子柴くんに家まで送ってもらった。



「あ、ここだよ」

「…マジかよ」

「え?知ってるの?」

「あー…友達がここに住んでてたまに来るんだ」

「そうなの!?凄い偶然だねー」

「そうだな」

「じゃあ駅までの道もわかるよね」

「おう」

「じゃあ御子柴くん、気を付けてね」

「おう、じゃあな」



御子柴くんの背中が見えなくなってから私はエントランスに入っていった。



「ただいまー」

「あ、お帰りなさい」

「遅くなってごめんね」

「ううん。それはいいけど…本当に前野さんの事苦手なのね」

「そうだね…私も初めてだよ、こんな徹底してまで会いたくない人って」

「まぁ確かにちょっと困る事もあるけど…」

「お姉ちゃんもちゃんと嫌な事は嫌って言わないとダメだからね」

「うん、わかってるわよ」



お姉ちゃんとそう約束をして、それにまだちょっと不安は残っていたけど…お姉ちゃんを信じる事にした。





「あ、紫姫ちゃーん!」

「千代ちゃん!野崎くんと御子柴くんもこんにちはー」

「ああ」

「おう。鹿島はそっち行ってねぇの?さっき教室出ていったけど」

「来てないよ?他の用事だったんじゃない?」

「そっか。てっきり紫姫の所行ったんだと思ってたぜ」

「あはは、遊だって休み時間の度に来る訳じゃないから」



私が御子柴くんと話していると千代ちゃんが何だか緊張したような顔で野崎くんと話していた。
…これってもしかして…



「…ね、千代ちゃん。ちょっといい?」

「え?何?」

「千代ちゃんってもしかして野崎くんの事が好きだったりする?」



2人から少し離れた所に連れ出して小さな声で問いかけると千代ちゃんは顔を赤くした。



「う、うん…!私の片思いなんだけど…」

「やっぱり!じゃあ私と一緒だね」

「紫姫ちゃんも野崎くんが…!?」

「え?あ、ごめんごめん!今の言い方は私が悪いね。野崎くんじゃないけど、私も片思いしてるの」

「ほ、ホントに…?」

「違うってばぁー。野崎くんはお友達なだけ」

「よかったぁー…。じゃあ誰に!?」

「…それは秘密っ」

「えぇー!ずるい!私のは知ってるのにー…」

「ごめんね?でも今は言えないから内緒ーっ」

「絶対見つけるからね!」

「じゃあバレないようにしないとなー」

「もう!」

「ごめんね?でも、千代ちゃんも恋してるってわかったから声かけたくて」

「鹿島くんは知らないの?」

「うん。遊も知ってる人だから気まずくて…。
それに遊は優しいから私に好きな人がいるってわかったら協力しようとすると思うから」

「協力してくれると困るの?」

「うーん…遊の場合その優しさが空回りしたりうっかり他の人に言いそうで怖くて…」

「そんな印象ないけど幼馴染の紫姫ちゃんが言うならそうなんだね。
でも私も紫姫ちゃんが好きな人わかったら協力するからね!」

「ありがとう。私も出来る事はするから言ってね!」

「うん!!」



それから千代ちゃんと私の間にひっそりと片思い同盟が組まれたけれど野崎くんと御子柴くんはそれに首を傾げているようだった。





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まだお相手の名前は登場していませんが一応片思い中という事は出てきたので千代ちゃんと片思い同盟を組ませてみました。
きっとこれから事あるごとにお互い報告したりきゃいきゃいしたりするんだと思います。
さて…お相手の名前はいつ出るかなぁ…←


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