Long

□お姫様とアシスタント
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「…遊、大丈夫?」

「あ、うん。平気平気」

「なんか今日は一段とすげぇな…」

「そう?まぁ黒板って意外と飛ぶよね」



遊はけろりとしていたけれど御子柴くんは若干引いたような顔で遊を見ていた。
…でもね遊。何を考えていたのかはわからないけど堀先輩をお姫様役に推薦なんてしたら怒られて当然だと思うの…。



「どうせまた怒られたんだろ?」

「いやーこれはただの照れ隠しなんだって。先輩の本当の気持ち…私だけはわかってあげてるつもりだよ…!!」

「…遊、多分だけどちゃんと先輩に話を聞いた方がいいと思う…」



むしろ私から先輩に聞いてみた方がいいかなぁ…なんて思いながら私達は駅で別れた。



「ただいまー。お姉ちゃーん、原稿終わったー?」

「お帰りなさい、紫姫。まだだけど少し修正したりするだけだから大丈夫よ」

「そっかー。じゃあご飯作るねー」

「うん、お願いね」



部屋に鞄を置いて、部屋着に着替えて夕食を作り出した。



「いただきます」

「いただきます」



それから2人で向かい合って夕食を食べているとお姉ちゃんの携帯が鳴った。



「はい、もしもし…えっ!?はい、はい…わかった。ちょっと聞いてみるわね」

「…どうしたの?」

「ねぇ紫姫。ご飯食べたらちょっと漫画家さんのお手伝い行ってくれないかしら…?」

「へ?私?」

「ええ。その人、ちょっと出版社の方からの連絡が行き違ってて締切に間に合わないかもしれなくて…私が行けたらいいんだけどこの後原稿直して前野さんに送らないとだし…」

「うーん…わかった。じゃあ私行ってくるよ」

「本当?ありがとう」

「ちなみに誰の?」

「夢野咲子さんの所よ」

「へー…夢野先生かぁ…。どんな人なんだろうー…」

「えっと…紫姫と同じ学校の男子生徒なの」

「…へ?」

「あ、大丈夫!今日はまだ女の子もいるみたいだし、2人っきりじゃないから…」

「あ、うん…」



へー…の恋しよっの作者さんって男の人なんだ…。
でも結構そういう人もいるもんね。



「お姉ちゃん、それって何処?」

「あ、ここの下の階よ」

「…へっ?」

「だから大丈夫よ」

「うん…?わ、かった…?」



まだ疑問に思う事はあるけどとりあえず急いでご飯を食べてから軽く支度をした。



「じゃあお姉ちゃん、行ってくるね」

「お願いね、行ってらっしゃい」



それからお姉ちゃんに聞いた部屋のインターホンを押した。



「はい」

「あ、私都ゆかりの妹です。漫画のお手伝いにきました」

「ああ、今行きます」



わー…本当に男の人の声だぁ…。どんな人だろう…。
そう思っているとガチャリ、と扉が開いた。



「…こんばんは」

「こんばん…えっ!?野崎くん!?」



扉の向こうから顔を出したのは野崎くんで…思わず動きを止めてしまった。



「あ、どうぞ」

「えっ!あ、おじゃま、します…」



靴を揃えてから部屋に上がると部屋にいた人も私も驚いたような顔をしていた。



「紫姫ちゃん!?」

「え、千代ちゃん!?」



少しの間はパニック状態だったけど皆落ち着きを取り戻していった。
ので千代ちゃんが野崎くんのアシスタントをしている事、私が都ゆかりの妹で今日は野崎くんのお手伝いに来た事を話した。



「へー…じゃあ千代ちゃんは野崎くんの漫画を通して仲良くなったんだねぇ」

「うん、そうなんだー」

「都さんと同じ苗字だから呼びずらいと思っていたらまさか姉妹だったとはな」

「私もまさか同級生が下の階に住んでてしかも少女漫画家だとは思わなかったよー…。あ、呼びにくいなら私の事は紫姫でいいよ」

「わかった。じゃあ紫姫、早速だがこのトーン貼り頼む」

「はーい。そういえば野崎くん、千代ちゃんはベタでしょ…?
他の作業担当の人には来てもらわなくて大丈夫なの?」

「ああ、一応背景の人にはこの後来てもらう予定だが…」

「え?そうだったの?」

「佐倉にも言ってなかったか?」

「聞いてないよ!」

「おーい、野崎ー。遅れて悪い…って…」

「え?…堀、先輩…!?」

「は!?何で紫姫が…!!?」



部屋に入って来た堀先輩と私は再びパニックのような状態になって…それを見て千代ちゃんと野崎くんは私達を落ち着かせようと必死だった。
それからお互いに何でここにやってきたのかをざっくりと話した。



「…という訳で、私はお手伝いに…」

「マジかよ…。おい野崎!何で言ってくれなかったんだよ!」

「いや…俺もついさっき紫姫が初めて手伝いにきてくれたので知らなかったんですよ」

「はー…まぁバレたもんは仕方ねぇか…。紫姫、俺は野崎の手伝いをしてるが…悪いが鹿島には黙っててくれねぇか?」

「遊に?」

「ああ…あいつが俺が野崎の漫画の手伝いしてるってバレたら手伝うって言って聞かねぇだろうし…」

「なるほどです…。わかりました。遊には言わないでおきますね」

「助かる」

「いえいえ。私もお姉ちゃんが漫画家だとは遊にも言っていないので…」

「ああ、お前の事も言わないでおく」

「お願いします」

「…話が終わったのなら原稿お願いしてもいいですか?」

「ああ、悪かったな。で、どれだよ」

「こっからここまでです」

「おっまえ…だから適当にとかいう指示はやめろ!!」

「せ、先輩!私も考えるの手伝いますから!!」

「…野崎くんのアシスタントさん達は賑やかだねぇ」

「そうか?」

「うん」



千代ちゃんと原稿を見ながらここはどのシーンか、なんて話し合ったりしている堀先輩を見ながらそう言うと野崎くんは首を傾げた。



「あ、野崎くん。私でよかったらトーンやモブ描きくらいは出来るからいつでも呼んでね」

「紫姫…お前、いい奴だな…!」

「あはは、そんな大袈裟なぁー」



…私が野崎くんと話しながら笑っていると千代ちゃんから嫉妬のような視線を感じたので慌てて違うからね!?なんて弁解をしていた。




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そんな訳でヒロインちゃんも野崎くんのアシスタントに加わりました!
ちなみにお姉ちゃんの原稿も手伝っております。
幼馴染の鹿島くんにもお姉ちゃんが恥ずかしがるので漫画家だという事は伏せている感じです。


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