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□お姫様と担当談義
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「お姉ちゃんただいまぁー」
「たまには怒って下さい!本当に怒って下さい!!」
「…あれ?」
家に着くなり聞き慣れた声がしたので部屋に入るとそこにはやっぱり野崎くんがいて…それから千代ちゃんも座っていた。
「ただいま」
「お帰りなさい、紫姫。私、今からバシッと言ってみますから!」
「へ?」
話が見えなくてきょとんとしていると小さい声で千代ちゃんが詳細を教えてくれた。
どうやら前野さんには色々困っている(野崎くんの場合は困らされた、だけど…)っていう話をしていたら野崎くんがお姉ちゃんにたまには怒ってくれ、って言ったからお姉ちゃんは今前野さんに電話をしているらしい。
「えっ…ご…ごめんなさい…」
『(何で都さん(お姉ちゃん)が謝ってんの…!?)』
「…バシッと言ってみました!」
「お姉ちゃん、バシッと言っても負けてたら意味ないと思うの…」
やり遂げたような顔をするお姉ちゃんだけど…多分、何か言いくるめられちゃったんだろうなぁ…。
「っていうかお姉ちゃん!ちゃんと嫌な事は嫌って言わないとダメって言ったでしょ?」
「言ったけど…」
「言っても改善されないと意味ないよ。もう…野崎くん、よかったらお姉ちゃんにあの人とどう付き合っていけばいいか教えてあげて…?」
「そうしてやりたいのは山々だが…俺もあの人とは上手くやっていた訳じゃないからなぁ…」
「えーっと…じゃあストレスの発散法とかはなかった?」
「じゃあセリフに文句でも仕込んでみましょうよ」
「セリフに?どうやって?」
それからお姉ちゃんと野崎くんで原稿を書き始めたので私は皆の分のお茶を淹れていた。
うーんっと…確かクッキーが買ってあったはず…それも一緒に出そうかな。
ぼんやり考え事をしながらお茶とお茶菓子を用意している間にまた話は進んでいたらしくて、部屋に戻ると机の電話から前野さんの声がしていた。
3人は何でか床に正座をしていて…特に大事な話でもなさそうだったからそっと通話をきった。
「少女漫画の読者の一人として言わせてもらいますけどこんなヒーロー見たくないです!!」
千代ちゃんが持つ紙にはたぬきの着ぐるみを着た男の人が描かれていて…しかもセリフがたぬきだポン…って何。
「…なぁに?これ」
「逆にやりすぎなくらいたぬきプッシュしてみたらという話になってな…それであれを送ったら前野さんがテンション上がってだな…」
「皆何やってるの!?」
普段大声を出したりする事はないんだけど、この時ばかりは思わずそう言ってしまった。
「出来ました!新キャラです!」
お姉ちゃんの声に3人で手元の紙を覗き込むと、そこには野崎くんに少し似た男の子が描かれていた。
…やっぱりたぬきの着ぐるみを着てるけど…。
「私も今までで一番好きです!!!」
「佐倉!!?」
「まぁ…千代ちゃんはそうだよね…」
だってこのキャラ、本当に野崎くんに似てるもん…。
そりゃ野崎くんの事が好きな千代ちゃんからしたら好きなキャラにもなるよね…。
「紫姫はどう思う?」
「えっと…中身はいいかもしれないけど、とりあえずたぬきの着ぐるみはやめない…?
お姉ちゃんが描いてるのは少女漫画であって動物漫画じゃないし…」
「それもそうね…。じゃあ次回機会があったら描くわね」
「…その前に前野さんから担当さんが代わる事を祈ってるね」
自分のお姉ちゃんながらマイペースだなぁ、なんて思いながらそう返すのが私には限界だった。
「あ。千代ちゃん、これお姉ちゃんから」
「え?わぁっ…!!本当に貰っていいの!?」
「うん。千代ちゃんもしかしたら欲しいかなーって思ったから。
お姉ちゃんも気に入ってくれたの嬉しかったみたいだから大丈夫だよ」
「ありがとう!都さんにもお礼伝えておいてくれる!?」
「勿論。喜んでたって言っておくね」
「紫姫ちゃんありがとう!私野崎くんに見せてくるね!!」
その後、千代がたぬきくんのイラストと都のサインが描かれたものを野崎に見せて色々とあった事を紫姫は知らなかった。
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このお話書くか迷いましたがあまりお姉ちゃんも出てこないので書かねば!となりました。
妹ちゃんは千代ちゃんの為にお姉ちゃんに描いてあげて?とお願いして翌日学校で渡してる感じで。
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