薄桜鬼
□序章
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私は煙管に口をつけ、ゆっくりと煙を吸った。そして、またゆっくりと吐く。
そうして窓から空を眺めていた。
空には鳥が自由に飛んでいる。
ああ、私も鳥になれたら……なんて、おとぎ話みたいなことを思ってしまった自分を嘲笑う。
馬鹿馬鹿しい。
私は煙管の灰をカンッと音を鳴らし落とした。
すると部屋の襖が開かれた。禿の久那が顔を出す。
「──姉さん、お客さんが来ております」
『……お客?』
そう呟く私。そしたらひょこりと懐かしい顔が見えた。
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『久しいね、千鶴。元気してた?』
そう少し緊張した顔で私を見る千鶴に聞いた。
千鶴に会うのはどれくらいぶりだろう。少し、背が伸びたみたい。
「げ、元気にしてました!」
『ふっ、どうしてそんなに吃るの?私に敬語とかやめて。昔みたいに喋ろ?』
吃る千鶴に思わず笑ってしまった。ああ、でも千鶴が緊張するのも仕方ないのかな。
ここは島原の角屋。
千鶴は初めて花街という地に足を踏み入れたんだろう。
『──で、女ひとりで江戸から京まで何しに?しかもそんな格好までして』
「春音さん…」
『えらい大層な理由があるでしょうね?』
しかも、雪村家にだいたい伝わる小太刀なんか腰に差して。そうスっと目を細め千鶴を見た。
すると千鶴はおずおずと口を開いた。
「じ、実は───」
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