黒バス short

□灰崎祥吾
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昼下がりする事もなく外をプラプラしていると耳に入る男の声、何故かその声が気になり角を曲がると人気のない少し薄暗い通路に見るからにガラの悪い男が三人
よく見ると壁を背にして、彼らに囲まれるように立っている小柄な少女が一人、少女は両手で鞄を握り締め見るからに怯えてる様子

…制服着ているあたり中学生か?てか、こんな展開マンガかよ、

なんて心の中でツッコみ、する事もないし何か面白いことでも起こるかもしれない、そんな期待を胸に「なぁ、」背後から話し掛ける
灰崎の声に一斉に振り向く男達

「あ?誰だテメェ」

一人の男が灰崎を睨みつけ唾を地面に吐き捨てるが、灰崎にそんな脅しは効かず

「何?アンタらそこのガキ、ナンパでもしてたわけ?ロリコンってヤツですか?あーでもアンタらイケメンとは程遠い面だもんな、ナンパしても断れるのがオチだろ」

淡々と憫笑するように男達に言えば

「んだとっ!?」

一人の男が灰崎の襟元をつかみ締め上げる

「テメェあんま調子のんなよ…殺すぞ」

男が締め上げる手に力を込めながら言えば

「手ぇ離せ…」

灰崎は男を鋭い眼孔で見下ろし低い声で呟くと男の頬に唾を吐きつけた

「…っな!」

一瞬手の力が緩まるのを灰崎は見逃さず男の額に自分の額を思いきり叩きつければ男はそのまま気絶し倒れ込む

「何すんだ!てめ!」

もう一人の男がさっと灰崎に拳を振り上げるが、灰崎はいとも簡単に避けそのまま体制を立て直し男の鳩尾に蹴りを入れる

「ガハッ、?!」

あまりの衝撃に男は蹴られた場所を抑え激しく咳き込む

チャッキ、そんな金属音がし後ろを振り向けば3人目のまだ無傷の男が果物ナイフをちらつかせ灰崎に襲い掛かる灰崎もまさかナイフを持ってるとは思っておらず少し反応が遅れナイフが頬をかする、

「つっ…、」

かすったとはいえ少し深い傷口らしく血が頬から顎へポタポタと地面に滴り落ちる

「ちっ」

手の甲で血を拭いナイフを持ってる男を睨めば

「…ひっ、う、ウワァアアアアア!!」

余程灰崎の眼孔に怯んだのか情けない声を出しナイフを両手で差し出し走ってくる男
灰崎は走ってくる男の手の甲を蹴り飛ばしナイフが音を立て壁に叩きつけられ地面に落ちる

男はそのままバランスを崩し尻もちをつくがすぐに情けない声を出しながら起き上がる
鳩尾を蹴られた男も蹴られた場所を抑えながら立ち上がり

「く、くそが!覚えてろよっ」

そんな捨てゼリフを吐いて気絶した男を引きずり慌ただしく消えていった


「しょーもな」

灰崎はそう吐き捨て帰ろうとするがふと視線を横に向けるとさっきまであの男達に囲まれてた少女が立っていた。




あー…完全に存在忘れてたわ、てか、まだいたんだ

「おい、ガキんちょ」

オレが話しかければ女はハッと放心状態から我にかえり

「ハッ…ハイ」とちいせぇ声で応える
「ケガとかしてねぇか?」

なんて柄にもなく心配の声を掛ける自分が気色わりぃ

「…あ、ありがとうござ…っ!?」

女はギョッと目を見開きオレを見ると

「血が…っ!大丈夫ですか!?」

オレに駆け寄りあたふためく女

「あー…平気だ」

「そ、そんなことないですっっ!だってスゴい血が…っすぐそこ私の家なんです!手当てするので来て下さいっ!!」

「はっ!?ちょ、大丈夫だっつーの!」

そんなオレの声も無視しこのガキはオレの腕をグイグイ引っ張り家に上げる


「そこら辺で座って待ってて下さい」

そう言われ通されたのは一つの部屋

まぁ…見るからにコイツの部屋だろう

見渡せば女が好きそうなぬいぐるみがそこら中に飾ってある、でもガチャガチャしてなく統一感のある小綺麗な女らしい部屋

「お待たせしました、傷口見せて下さい」

「…自分でやっから触んな」

頬に触れる女の手を退け眉を顰め言えば

「ダメです結構傷口が深いんですよ、痕残ったらどうするんですか!」

「ちっ、うるせぇガキだな…勝手にしろ」



「スイマセン…私のせいで」

「別にてめぇを助けたわけじゃねぇ、暇だったから良い遊び相手を見つけただけ、まぁすぐ壊れちまったけどよ」

「…でもありがとうございます」

そう言い頭を深々と下げその後は手際の良い手当てを黙々と続ける女

「出来ました」

そう言われ頬に触れれば綺麗に貼られてるガーゼ

「…サンキュ」

一応お礼をすれば

「せめてものお礼です」

オレを見つめ微笑む女にムズムズとよくわかんない感情が湧き上がる

…よくわかんねぇけど、この女といると調子が狂うわ

「…オレ帰るわ」

その場の空気に居られなくなり立ち上がると

「え…っ、まっ待って下さい!」

「…あ?」袖口を引っ張られる

「…なんだよ」

「えっと…まだ、その…っお話した、いです」

もごもごと顔を真っ赤にしてか細い声で言う女
そんな女に加虐心が湧き少し意地悪してやろうと思い

「エロいことでもしてくれんの?」と女に聞けば

キョトンとした顔でオレを見るコイツの両手をつかみ床に縫いつけ押し倒す

「誘ってんだろ?だからシてやるよ」

女の首筋に噛みつけば

「や…っ、やだ!」

「は、冗談だって、誰がテメェみたいなガき…ーッ?!」

顔を上げ女を見れば目から涙をぼろぼろ流し耳まで真っ赤な顔、カタカタとオレの手に伝わる震える両手

やべ…っやりすぎた…

吃驚し両手を離せば 顔を覆いヒクヒクと泣きじゃくる女

「んな、泣くなよ冗談だろ冗談!」

あぁ…なんでオレこんなガキに必死になって…

心底帰りてぇと思う半面どこかでほっとけないという矛盾する心

「あーっ!クソ!びぃびぃうるせぇな!」

女の襟元をつかみ無理やり自分に向かせ

「オレが悪かった!だから泣き止め!」

なんて強引な謝り方をすれば恐怖から解放されたのかオレの胸元の服をつかみ

「ほんっとに…っこわ、こわかった、んだがらぁああ」

顔をうずめまた泣き始める

あー…くそ…もうどうにでもなれっ

これ以上面倒くさいのは御免だ、そう思い深い溜め息をし天井を見上げる

「…落ち着いたか?」

オレの胸元に顔をうずめる女に聞けばコクリと頷く

「…ガキには興味ねぇから真に受けんな」

「…ガキじゃありません、高校生です」

小さい声で言う女

「…ウソだろ、アンタいくつ?」

「17…アナタは?」

…年上かよ、見えねぇ

「…16」

「…ガキ」

「あ゙?」

「嘘ですスミマセン、…私も1つ聞いていい?」

「あ?」

「お名前は?」

「…灰崎祥吾」

「…灰崎くんって呼んでもいい?」

「勝手にすれば、てか何気にタメ語で話してんじゃねぇよ」

「…だって私のが年上だもの」

「…ちっ」

「…ねぇ」

「あ?」

「もう少しお話したい」

「懲りねぇ女だな、さっきみたいにまた襲われるかもだぜ?」

「…灰崎くんは優しいもの、そんな事しないわ」

「…は、さっき襲われかけたのによくそんなこと言えんな」

「…じゃあ、またさっきみたいな事するの?」

「‥しねーよ、泣かれんのめんどくせぇし、それにお前の貧相な身体じゃシたくても勃たねぇよ」



…‥


「あ、もうこんな時間…」そう言われ時計に目をやると結構な時間が経っていて

「ごめんね、こんな時間まで引き止めちゃって」

「…別に」

「今日は楽しかったありがとう」

ふわりと微笑むと徐に伸びる女の手

「痕残らなきゃいいけど…」

眉を下げオレの頬に優しく手を触れるコイツに心臓がキュッと締め付けられる人に優しくされたことが無いからかコイツのこういう所を苦手と思ってしまう

「‥また変なヤツに絡まれんなよ、お前ちいせぇからすぐ誘拐とかされそうだもんな」

「そんなことないもん」

「どうだか」

何故かこの場から離れたくなくてくだらない話で場をつなぎ止めようとしてる自分がいる

「…じゃあ」

「あぁ」

手を小さく振るコイツを一瞥し外へ歩き出す、息をするたび白く消えゆく湯気を眺め自分でもなんていったらわからないスカスカとカラッポの心


「灰崎くんっ!」

少し歩いたところでアイツの声が俺を呼び止める

「なんだよ」

後ろを振り向けば走ってきたのか少し息を切らしてる

「…私ね、△△っていうカフェでバイトしてるの、だから良かったら遊びに来て、それで今度会う時は名前で呼んでね、私の名前は、なまえだからガキでもお前でもない」

女はそう言い“またね”と手を振り走ってく

「…は、誰がテメェみたいなガキに会いに行くかよ」


そう聞こえもしない呟きを小さくなっていく彼女の背中にぶつけ見つめる灰崎のスカスカだった心は満たされていて



─その数日後灰崎があの子の働くバイト先に足を運ぶのはまた別のお話─

「いらっしゃ…」

「…よぉ」

「灰崎、くん!」

「暇だったからお前のアホ面見にきてやった」

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