海を奏でるお姫様《本編・短編》

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『どこもかしこも真っ暗。ここ、人なんて生きてるのかな…』


今の時間は夜ではないはず。日を遮ってしまうほどの大きなジャングルの上空を見てそう思う。これは本当に困ったな。何か変な鳥の鳴き声も聞こえてくるじゃないか。


『そういえば、私…自殺したんだよね』


いっそのこと、ここでのたれ死んでもいいのかもしれない。ふと、頭にそんな考えがよぎった。元々私は死ぬつもりだったんだし、今さらどこで死のうが関係ない。そう思い、足を止めようとしたその瞬間だった。
暗い森の中で、一筋の光を見つける。今諦めようとしていたからこそ、そこへ行こうかは悩んだがわざわざ光を見逃すなんて普通の人間ならしないだろう。仕方ないので、光の元へと進む。


「麦わらだ!捕らえろ!」


目が覚めてから、初めて誰かの声を聞いた。てっきりここは無人島かなんかではないかという疑問が頭に浮かんでいたので、人がいることに少なからず衝撃を受ける。でも、これで誰かここで住んでいる人がいるってことはわかった。その声の元へ歩いてみると、そこには町が広がっている。とりあえず周辺を見てみるが、やっぱり何もわからない。ていうかお店の看板とか、全く読めないんだけど。ここって、そもそも日本でもないの?


『はぁ、本当にここはどこ………ん?』


ふと、何かが飛ばされているのに気づく。しかもそれは、自分の元に向かってきているようにも見えた。思わず、その飛ばされているものを凝視する。


『……帽子?』



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