海を奏でるお姫様《本編・短編》

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「それじゃあ、ここで待っていてくれ」


彼の言う海軍基地に到着すると、彼はそのまま私を待たせて中に入っていく。ここで待つように言われたため、変に動くこともできないや。私は塀に背中を預けながら、晴れやかな空を仰ぎみる。


『…海軍か』


本当は、頭のどこかでわかっていた。身分なんていくら調べても、きっと何もわからないんだろうなって。
実は私の中では、ある一つの仮説が成り立っている。ここは自分の住む世界とは違った、別世界なのではないだろうか。そもそも私は屋上から飛び降りたらここにいたのだ。下にジャングルなんてなかった。だったら、あの拍子でどこか知らない場所に飛ばされてしまったのかもしれない。そうなれば、今までの出来事だって納得しようと思えばできる。


『アニメとか漫画ではよくあるけど…実際にこうなってみると、変な感じ』


ただ、まだ仮説でしかないからね。もしかしたら本当に、飛び降りた勢いで外国まで来たのかもしれない。ありえないとは思うが…ここが天国ではないという保証も確信もどこにもない。まあ、どちらにせよここが元々私のいた場所ではないことだけは確かなんだが。


『…はあ』


「お嬢ちゃん、なかなかかわいい顔してるじゃねぇか」


重い溜め息をついた時に現れたのは、まるでどこかのギャンブル場から帰ってきたようななりをしている男の人。話しかけてきた男の人以外にも、何人か仲間か友達だと思われる人がいる。何で話しかけてくるかな。無視してくださいよ。しかもこれってちょっと、嫌な予感がするんだけどなぁ…また溜め息を吐きたくなった。



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