海を奏でるお姫様《本編・短編》

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「こんなところで突っ立って、何してんだ?誰かを待っているのか?」


うーん…待っているといえば、確かにそうなるのかも。だけど待つ意味があるかと聞かれたら、答えはノーだ。そんなことを言えば笑われるだろうから、わざと話を変えるために別のことを聞く。


『何か…用ですか?』


「へえ、ずいぶんと挑戦的じゃねぇか。面白い…ベラミーに見せてやろう」


私の質問に答える気がなさそうな彼に、思わず呆れる。明らかに私よりも歳は上…なのに、この身勝手さは何なんだ。誰だよ、ベラミーとやらは。


「嬢ちゃん、ついてきな。でないと…わかってるか?」


挑発するように、刀をちらつかせる男。これで私が怯えるとでも思ったのだろう。あいにく、私も普通の女の子ではないため…そんなものにはいちいち怯えないんだよ。今まで、何度実の母親から包丁を向けられたと思ってるんだ。だけど、こういう人ってついていかなかったら無理やりでも連れていくだろう。それはなかなかめんどい。


『…わかりました』


「なかなか、話のわかる嬢ちゃんでよかったぜ。おれだってこんな小さい女の子に、刀を向けるのは気がひけるからな」


いや、絶対に嘘でしょ。どうせ、躊躇いなく私を斬れる。確信を持って言えた。しかし、私は何も言わずにただ彼の少し後ろを歩いていく。彼の言う“ベラミー”という人の元に。



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