ぬらりひょんの孫
□第一幕
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天望「玉藻天望です。よろしくお願いします」
浮世絵中学校にこの日、転校生がやってきた
胸元まである茶髪
それをハーフアップに結い上げている、紫がかった赤いリボン
活発そうなオレンジ色の瞳
玉藻天望と名乗った、この少女だ
清継「さてさて、諸君!今回の妖怪の話だがーー」
天望「!」
聞こえてきた言葉に、天望が反応する
天望「ねぇ」
清継「ん?」
天望「今、妖怪って言った?」
清継「君は確か、転校生の・・・」
天望「玉藻天望。よろしくね」
清継「ボクは清十字清継だ、よろしく。それと!我が清十字怪奇探偵団の団員達だ!」
紗織「勝手にされただけだっての。私、巻紗織。よろしく」
夏実「私は鳥居夏実。よろしくね」
島「し、島二郎です!」
島〈び、美人だ///〉
カナ「私はカナ。家長カナよ」
ゆら「私は花開院ゆら」
リクオ「ボクは奴良リクオ。よろしくね、玉藻さん」
天望「天望でいいよ。それより、えっと・・・奴良くん、だよね」
リクオ「え?うん」
天望「あなた、面白いのね。混ざった気配がする」
リクオ「え」
天望「クスッ」
リクオ「君は・・・一体・・・」
天望「私のことは、また今度ね♪」
牛鬼との一件に決着がついたのも束の間、この謎の少女に振り回される予感を感じたリクオ
それ以降の玉藻天望は、普通に中学生をやっていた
特に怪しい様子を見せないからか、リクオの警戒心も少し薄れていた
氷麗「転校生、ですか?」
リクオ「うん。ちょっと変わった感じに思えたんだけど・・・気のせいだったのかなって」
青田坊「混ざった気配ってのは、まさかリクオ様が4分の1とはいえ、総大将の血を継いでいらっしゃるとバレてたんじゃあないんすか?」
リクオ「ボクも最初はそう思ったんだけど・・・」
下校しながら話しているのは、及川氷麗こと雪女
そして倉田こと青田坊
2人は勿論、妖怪だ
側近として、リクオの護衛をしているのだ
同じ学校に生徒として通い、5年前にリクオが妖怪として覚醒してからずっと
まあもっとも、リクオ本人は中学1年になる現在まで、その事には気付かなかったようだが・・・
リクオ「それからの彼女が普通過ぎて、逆に疑えなくなってきちゃって・・・」
氷麗「ですが、油断は禁物ですよ!リクオ様」
リクオ「それは、わかってるけど・・・」
そんな彼らの様子を、離れた路地から見つめる視線が2つ
??『あらあら。側近の方々がベッタリですわ』
??「如何されますか、姫?」
??『当然、様子見ですわ。このままでは私でも近付けませんもの。ですが、今夜にでもご挨拶には伺いますわ。直接ね』
??「まさか、奴良組本家に?」
??『あら、そこ以外に伺う所がありまして?』
??「若頭の貴女が直接行かずとも・・・!」
??『いいえ、それは違いますわ。若頭だからこそ、私が直接伺う事に意味がありますの。朋衛、わかっていますね?貴方は先にお帰りなさいな』
朋衛「ですが、俺は!」
??『私だけでも、問題ありませんわ。戦う意思は、今のところありませんもの。ですがまあ、あちらに謝罪する気がないのならば、お話は変わってきますが・・・その際は、それ相応の態度で接してやりますわ』
朋衛「・・・・・・わかりました。今は、従います。貴女の強さは俺もわかってはいます。わかってはいますが・・・」
??『心配せずとも、私は大丈夫です。奴良組に一矢報いるまでは、この命、差し上げる気は一切ありませんの』
朋衛「姫!」
??『私は覚悟を述べたまで。実際、私では奴良組には勝てない・・・ご存知でしょう、朋衛?』
朋衛「それは・・・」
??『我が組の者達は私も含め、戦闘というより呪術を得意とする組ーー相性は悪いと、わかっています』
朋衛「・・・・・・」
??『ですがそれでも、私は許せないのです。護ると言ったくせに、弱いからと見捨てた彼の者達を・・・ぬらりひょんと奴良組の者共を!』
怒りと憎しみが込められたその声色は、彼女の心を現していた
風になびく桃色の髪と、紫がかった赤いリボン
夕日で輝くオレンジ色の瞳
髪の桃色はまるで、桜のような色だったーー
リクオ「?」
氷羅「リクオ様、どうかされましたか?」
リクオ「・・・あ、ううん。なんでもないよ」
氷羅「?そう、ですか・・・」
リクオ〈今・・・〉
視界の片隅で、桜を見た気がした
だがこの時期だ、見間違いだろう
そう考えたリクオは、止めていた歩みを再開した
オレンジ色が睨んでいることには、気付かずにーー