ぬらりひょんの孫

□第一幕
1ページ/8ページ




天望「玉藻(たまも)天望(あまね)です。よろしくお願いします」



浮世絵中学校にこの日、転校生がやってきた



胸元まである茶髪



それをハーフアップに結い上げている、紫がかった赤いリボン



活発そうなオレンジ色の瞳



玉藻天望と名乗った、この少女だ



清継「さてさて、諸君!今回の妖怪の話だがーー」



天望「!」



聞こえてきた言葉に、天望が反応する



天望「ねぇ」



清継「ん?」



天望「今、妖怪って言った?」



清継「君は確か、転校生の・・・」



天望「玉藻天望。よろしくね」



清継「ボクは清十字清継だ、よろしく。それと!我が清十字怪奇探偵団の団員達だ!」



紗織「勝手にされただけだっての。私、巻紗織。よろしく」



夏実「私は鳥居夏実。よろしくね」



島「し、島二郎です!」



島〈び、美人だ///〉



カナ「私はカナ。家長カナよ」



ゆら「私は花開院ゆら」



リクオ「ボクは奴良リクオ。よろしくね、玉藻さん」



天望「天望でいいよ。それより、えっと・・・奴良くん、だよね」



リクオ「え?うん」



天望「あなた、面白いのね。混ざった気配がする」



リクオ「え」



天望「クスッ」



リクオ「君は・・・一体・・・」



天望「私のことは、また今度ね♪」



牛鬼との一件に決着がついたのも束の間、この謎の少女に振り回される予感を感じたリクオ



それ以降の玉藻天望は、普通に中学生をやっていた



特に怪しい様子を見せないからか、リクオの警戒心も少し薄れていた



氷麗「転校生、ですか?」



リクオ「うん。ちょっと変わった感じに思えたんだけど・・・気のせいだったのかなって」



青田坊「混ざった気配ってのは、まさかリクオ様が4分の1とはいえ、総大将の血を継いでいらっしゃるとバレてたんじゃあないんすか?」



リクオ「ボクも最初はそう思ったんだけど・・・」



下校しながら話しているのは、及川氷麗こと雪女



そして倉田こと青田坊



2人は勿論、妖怪だ



側近として、リクオの護衛をしているのだ



同じ学校に生徒として通い、5年前にリクオが妖怪として覚醒してからずっと



まあもっとも、リクオ本人は中学1年になる現在まで、その事には気付かなかったようだが・・・



リクオ「それからの彼女が普通過ぎて、逆に疑えなくなってきちゃって・・・」



氷麗「ですが、油断は禁物ですよ!リクオ様」



リクオ「それは、わかってるけど・・・」



そんな彼らの様子を、離れた路地から見つめる視線が2つ



??『あらあら。側近の方々がベッタリですわ』



??「如何されますか、姫?」



??『当然、様子見ですわ。このままでは(わたくし)でも近付けませんもの。ですが、今夜にでもご挨拶には伺いますわ。直接ね』



??「まさか、奴良組本家に?」



??『あら、そこ以外に伺う所がありまして?』



??「若頭の貴女が直接行かずとも・・・!」



??『いいえ、それは違いますわ。若頭だからこそ、私が直接伺う事に意味がありますの。朋衛(ともえ)、わかっていますね?貴方は先にお帰りなさいな』



朋衛「ですが、俺は!」



??『私だけでも、問題ありませんわ。戦う意思は、今のところありませんもの。ですがまあ、あちらに謝罪する気がないのならば、お話は変わってきますが・・・その際は、それ相応の態度で接してやりますわ』



朋衛「・・・・・・わかりました。今は、従います。貴女の強さは俺もわかってはいます。わかってはいますが・・・」



??『心配せずとも、私は大丈夫です。奴良組に一矢報いるまでは、この命、差し上げる気は一切ありませんの』



朋衛「姫!」



??『私は覚悟を述べたまで。実際、私では奴良組には勝てない・・・ご存知でしょう、朋衛?』



朋衛「それは・・・」



??『我が組の者達は私も含め、戦闘というより呪術を得意とする組ーー相性は悪いと、わかっています』



朋衛「・・・・・・」



??『ですがそれでも、私は許せないのです。護ると言ったくせに、弱いからと見捨てた彼の者達を・・・ぬらりひょんと奴良組の者共を!』



怒りと憎しみが込められたその声色は、彼女の心を現していた



風になびく桃色の髪と、紫がかった赤いリボン



夕日で輝くオレンジ色の瞳



髪の桃色はまるで、桜のような色だったーー



リクオ「?」



氷羅「リクオ様、どうかされましたか?」



リクオ「・・・あ、ううん。なんでもないよ」



氷羅「?そう、ですか・・・」



リクオ〈今・・・〉



視界の片隅で、桜を見た気がした



だがこの時期だ、見間違いだろう



そう考えたリクオは、止めていた歩みを再開した



オレンジ色が睨んでいることには、気付かずにーー
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ