ワンピース《サボ》
□次元を渡って
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母親に捨てられた
父親に失望された
私の居場所が無くなった
私の視る景色から色が無くなった
私は・・・・・・自らの音を無くした
16歳・高校入学式
「・・・・・・」
玲衣は、自分が入学する公立高校の門前に立っていた
奨学金を勝ち取った彼女は、そのお金と祖父母からの援助金で公立高校に入学
1週間前、彼女は退院した
視力を失い掛けていたが、なんとか手術に成功し、今では日常生活に支障が出ない程にまで回復していた
しかし、彼女にはまだ障害があった
それは11年前からだ
玲衣は声が出ない
よって、筆談か手話しか会話手段がないのだ
ホームルームも終わり、下校となった
玲衣〈中卒よりも高卒か大卒の方がいい、って聞いたけど・・・正直面倒くさい。私を必要とする人なんて、もういないのに・・・・・・何やってるんだろう、私〉
ただ敷かれたレールの上を進むだけ
それが玲衣の生き方だった
他の生き方を、彼女は知らない・・・
独り暮らしの部屋に帰ってきたのは、夕方だ
祖父母が共に暮らさないかと言ってくれたが、断った
家で一人でいるこの時間だけが、彼女にとっては憩いの時間だったからだ
外向けのキャラを装っている自分が、唯一本当の自分でいられる場所
作り笑いを浮かべ愛想を振り撒き、声が出ない分、自分が不利にならないよう周りから良く見られようとする
声が出ないから優遇されているとは、絶対に思われたくはない
だから必死に勉強し、常にトップの成績を納めてきた
必要最低限の事しか、周りを頼ったりはしなかった
例え声が出なくても、一人でできる事は少なくないのだと思わせたかった
そして何より、両親の期待に応えるため・・・
両親はどちらも、子供の自分に大きな期待を抱いているとわかっていた
期待に応えるのは、並の努力では足りなかった
常にトップの成績を維持しろと、周りにとって模範となれるような存在であれと
玲衣への期待と理想は、大き過ぎたのだ
彼女が一度失敗しただけで見放し、突き放した
その日から、玲衣は両親が嫌いになった
この世界が嫌いになった