幽☆遊☆白書

□第2章
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幻海「茉莉!茉莉!ちょいと手伝いな!」



茉莉「なんですか、師範?」



霊光波動拳の使い手である幻海



その彼女の住まいである、山奥にある寺



今の咲良茉莉の住まいでもある



幻海「くじを作るの手伝いな。ただし、霊力には気を付けるんだよ」



茉莉「くじ?というかすんごい無茶」



幻海「一定以上の霊力に反応して色が変わるのさ。最初から変わっちまってたら意味がないからね」



茉莉「ああ、なるほど。今度の継承者トーナメントで使うヤツですね。でもくじなんて言っていいんですか?受験者、呆れるか怒りますよ」



幻海「フンッ。戦いだけじゃない、霊気量を計るのも大事なのさ」



茉莉「とか言って師範、実は受験者の反応を見るのも楽しみにしてるんじゃないですか?」



幻海「おや、バレたかい」



茉莉「何年師範のそばにいると思ってるんですか・・・」



妖怪に両親を殺され、幻海に助けられて数年



茉莉は幻海と寝食を共にしていた



寺で生活し、霊力を扱うための修行をしていた



が、正式な弟子というわけではない



霊光波動拳の継承者ではないのだ



幻海「ところで茉莉、最近また霊力が上がってきたんじゃないかい?そろそろそいつの調整が必要だね」



茉莉「・・・だからか。最近ちょっと怠いと思った」



年々、茉莉の霊力は上がり続けている



そのため、左手首にあるリング状のブレスレットで力を抑えているのだ



謂わばこのブレスレットは、霊力の制御装置のような物



自分でも霊力を抑えてはいるが、それでも溢れてしまうのだ



幻海「そういう事はもっと早くに言いな。死にたいのかい?」



茉莉「・・・気を付けます」



幻海「全く、呆れるよ。他人の事には敏感なくせに自分の事となると鈍感になるね、お前は」



茉莉「・・・」



幻海「・・・調整には時間がかかるからね。しばらくは自分で抑えてな。ただし、体調が悪くなったらすぐにあたしに言いな。わかったね?」



茉莉「はーい・・・」



渋々と言った様子で返答する茉莉に、幻海はため息を吐く



だが霊力を抑えられなくなった時、どうなってしまうのかというのは茉莉自身が一番よくわかっている



幻海もそう理解しているからこそ、あまりしつこくは言わないようにしている



茉莉「・・・あ。私、あとで少し出かけます」



幻海「また蔵馬の所かい?」



茉莉「監視役ですから。それに、一応クラスメイトなので・・・助けてあげられる所は助けてあげないと」



彼が休んでいた分のノートを見せたり、授業内容を教えたり



監視だけではなく、そういった事もしていたのだ



幻海「監視役ねぇ・・・」



茉莉は霊力が高いのもあって、妖怪から狙われ易い



それもあってか、あまり他人と関わりを持たなくなってしまった



巻き込みたくないからだ



だが蔵馬ならば心配はないだろう



たとえ巻き込まれても、自分の身は自分で守れるはずだ



このまま関わってくれればいいのにと思うのが、幻海の本音だった



妖怪でも、蔵馬はこれまで茉莉を狙って来た連中とは違う



そういった色んな事情も含めて、コエンマは茉莉に監視役を命じたのだろう



茉莉の過去も事情も、コエンマは知っている



本来なら敵同士であるはずの茉莉と蔵馬だが、こうも偶然が重なってくれたおかげか、互いに敵視している様子はない



蔵馬は茉莉に興味を持っている



茉莉も茉莉で、蔵馬といる事に関して臆病になっている様子はない



おまけに人間界の学校ではクラスメイト



幻海「全く、とんでもない(えにし)が結ばれたもんだよ・・・」



茉莉「?」



苦笑しながら口を開いた幻海の呟きは、どうやら彼女には上手く聞き取れなかったらしい



小首を傾げて幻海を見つめる



幻海「なんでもないよ。さて、さっさと済ませちまうよ。出かけるんだろ?」



茉莉「あくまでも私がいるうちに済ませる気なんですね」



幻海「ふたりでやった方が早いだろう?」



茉莉「人使い荒いなぁ・・・」



幻海「なんか言ったかい?」



茉莉「いいえ、なんにも」



こんなやり取りを傍から見れば、まるで祖母と孫のように思わせる



だがこの2人には、血の繋がりなど存在しない



そんなものなど無くとも、この2人は上手くやれている



正式な弟子でもなければ本当の孫でもない



それでも幻海は、こんな生活をするのも悪くないと考えている



口には出さないが



あの日、なぜ自分がこの少女を引き取る事にしたのかは、正直に言って今でもよくわからないままだ



だがそれでも言い切れる



あの日、あの時の自分の判断は・・・間違っていなかったと−−
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