無人惑星サヴァイヴ

□第1話
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アスカ「おはよう」



カオル「ああ・・・」



黒一色の服を着た少年に、赤毛に翡翠の瞳の中性的な顔立ちの人物が話し掛ける



後ろ髪は短く、横髪に向かうにつれて長くなっている赤毛



宝石のような翡翠の瞳



白いブラウスに、モスグリーンのフード付きパーカー



黒いロングパンツに黒いローファー



少年のイメージが強い



アスカ「!」



視界の隅に、黒い影が入り込む



カオル「?・・・アスカ?」



アスカ「・・・・・・」



足を止めたアスカに気付き、カオルも立ち止まって振り返る



ある一点を見つめたまま、アスカは佇んでいた



アスカ「・・・・・・!」



突然目の前が真っ暗になり、背後にはひとり分の気配がある



首を後ろに回して斜め上を見上げると、こちらを見下ろしているカオルがいた



目の前が真っ暗になったのは、彼が片手で両目を覆ったからだった



アスカ「・・・・・・カオルは、ボクから離れていかないの?」



カオル「離れる理由がない」



アスカ「だって、カオルにも視えてないんでしょう?アレ」



カオル「・・・・・・行くぞ」



アスカの手首を掴んで引っ張り、ソリア学園へと向かう



その途中、もうすぐ門に着くという所で、オレンジの髪の少女が後ろから走ってきた



ルナ「走らないと、遅刻しちゃうよ」



だが、カオルはちらりと見ただけ



アスカの手を引くと、背中に腕を回して肩を掴み、膝裏にも腕を回す



アスカ「わっ」



一瞬にしてアスカを横抱きにすると、カオルは自身の脚力だけで塀を上がって越えた



オレンジの髪の少女・転校生のルナがそれを見て感心していたのを、2人は知らない



着地してすぐ、アスカが口を開く



アスカ「別に・・・ボクひとりでも上がれた・・・」



カオル「こっちの方が早い」



アスカ「過保護」



呟くようにして抗議の声をあげるアスカに苦笑すると、そっと地面に降ろして歩き出す



その後ろを、アスカが小走りで追い掛けた



一方その頃、閉まり掛けていた門を飛び越えたルナを見つけ、生徒会長兼風紀委員長のメノリが注意する



メノリ「見ない顔ね、転校生?」



ルナ「は、はい!」



メノリ「じゃあ今回は大目に見てあげるけど、我が名門ソリア学園においては、歩道上を走る事は禁止されているの。次に見つけたら罰則を課します。以後、気を付けるように」



ルナ「は、はぁ・・・」



メノリ「返事は、はい!」



ルナ「は、はい!」



思わず背筋を伸ばして言ったルナを見て、メノリはこの場を立ち去る



それを見送ると、ルナは脱力して息を吐き出した



ルナ「ふぅ・・・」



シャアラ「ふふっ」



横から聞こえてきた笑い声に顔を向けると、同い年くらいの少女がいた



ルナは笑みを浮かべ、彼女に駆け寄る



ルナ「あの人、なんなの?」



シャアラ「生徒会長のメノリよ」



ルナ「生徒会長が、なんで校門チェックなんかしてるわけ?」



シャアラ「あの人、風紀委員長も兼ねているのよ。この学園は、服装とかも厳しいから」



ルナ「へぇー、さすがは名門私立学校ねぇ」



シャアラ「あの・・・あなたは?」



ルナ「あ。私、ルナ!よろしく」



シャアラ「シャアラです。よろしく」



ルナから差し出された手を握り返し、シャアラは彼女と握手した










一緒に校内に入り、並んで廊下を歩く



シャアラ「ねぇ、ルナはどこから来たの?」



ルナ「火星だよ」



シャアラ「へぇ!火星や冥王星の未開発地区には、未発見のビーストが住んでるって、テレビで見たことあるけど・・・それって本当なの?」



ルナ「そんなことないよ!」



2人で楽しげに会話をしていると、その横をアスカが独りで通り、追い越していく



ルナ「あ・・・あの人、さっきの・・・」



シャアラ「知ってるの?」



ルナ「ううん、校門の所で見掛けただけ。もうひとり一緒だったはずだけど・・・」



シャアラ「アスカが?誰かと一緒だったのなら、カオルだと思うけど・・・」



ルナ「アスカって、今の人?」



シャアラ「うん。アスカは結構謎が多い人よ。でもね、校内ではわりと目立つ子なの」



ルナ「目立つ?」



シャアラ「謎が多い人で、髪の色とか目の色とかああだし。何より顔立ちが中性的な人だから、尚更かな」



ルナ「へぇ・・・で、どっちなの?」



シャアラ「さぁ?あたしも知らないの。着替えの時はいつの間にか終わらせちゃってるから見掛けないし、パーカーの前はいつも閉めちゃってるから・・・」



ルナ「余計にわからないよねぇ」



シャアラ「そうなの。それに、自分のことボクって言ってるから・・・声の高さもどっちにも有り勝ちだしね」



ルナ「性別からもう謎なんだね?」



シャアラ「ふふっ、そうなの」



アスカ〈聞こえてるっつーの。悪かったな、謎で・・・〉
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