最遊記

□序章
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出逢いはいつだって、唐突だ−−


優姫「・・・・・・あ?」


目の前にいる4人に、思わず呆けた声を出した


4人も同じように、呆けた顔をしている


彼女と彼らの出逢いは


いや、これは再会とも言える


それは、本当に唐突だった−−


優姫「・・・・・・誰お前ら?」


悟浄「第一声がそれかよ」










その日は、なんでもない日だった


いつも通りの、つまらない日常


在り来たりな一日を過ごしていたはずだった


だがそれは、1台の車に一瞬で壊された


青信号で歩道を歩いていた、はずだった


車道側の信号は、確かに赤だった


なのに、1台のトラックが突っ込んで来た


痛みがあったのかなんて、覚えていない


体が吹き飛ばされて、コンクリートの上を何度か転がったのはわかった


まあ、いいか・・・


自分が死んだところで何も変わらないし、誰も何も思わない


桜葉(さくらば)優姫(ゆうき)は、18歳にして独りだった


いや


彼女はもっと幼い頃から、独りだった


きょうだいはいない


親は彼女に関心がない


誰も彼女に近寄ろうとしない


それは彼女の見た目と、雰囲気がそうさせていた


彼女自身、あまり周りと関わらないようにしているのも原因だが・・・


中性的な顔立ちと、男口調、名前のせいでよく間違われる


しかし彼女は、歴とした少女だ


鎖骨まで長さのある、漆黒のミディアムヘア


海のような、空のような青い瞳


おまけに優姫(ゆうき)というこの名前


漢字だけを見れば、女の子らしいと思うだろう


だがその少女の人生も、ここで終いだろう


彼女自身も、そして誰もがそう思った


だが、実際は違った










白い羽根が、真っ暗闇の中に見えた気がした−−










浮上するはずのなかった意識が浮上し、見知らぬ天井が視界に入った


優姫「・・・・・・知らない天井・・・」


ふと口から出た言葉は、誰に聞こえるわけでもなく


だがまるで聞こえていたかのように、誰かが部屋に入ってきた


優姫「・・・・・・あ?」


ここで冒頭に戻る


目の前にいる4人に、思わず呆けた声を出した


4人も同じように、呆けた顔をしている


彼女と彼らの、再会とも言える出逢いは・・・本当に唐突だった−−


優姫「・・・・・・誰お前ら?」


悟浄「第一声がそれかよ」


彼女は彼らを知っていた


赤い髪の男・沙悟浄が呆れような声色で突っ込んだ


八戒「まあまあ。ひとまず、目が覚めてよかったですよ。ちょっと危ない状態でしたからね」


そう言ったのは、片方しかない眼鏡をしている男・猪八戒


悟空「血のにおいがしたからさ、何かと思ったらあんたが倒れてたんだ。助かってよかったぜ」


人懐っこい笑顔を見せながら言った男・孫悟空は安心した様子だ


ただひとり、金髪の男・玄奘三蔵は終始不機嫌そうな顔をして、ずっと黙っている


優姫「・・・・・・」


八戒「体調はいかがですか?」


優姫「・・・・・・まあまあ」


八戒「それはよかった。あ、僕は猪八戒といいます。あなたは?」


優姫「・・・桜葉優姫」


悟空「へぇ、優姫っていうんだな。オレ悟空ってんだ、よろしくな」


悟浄「俺は悟浄だ、沙悟浄」


三蔵「・・・」


八戒「三蔵」


三蔵「・・・・・・玄奘三蔵」


優姫「・・・お前らコスプレイヤーかなんかか?」


悟浄「コス・・・なんだって?」


優姫「・・・・・・いや」


体を起こそうとベッドから這い出るが、全身が痛むような感覚に動きが止まる


優姫「うっ・・・」


八戒「あ、まだ動かない方がいいですよ。何があったかはわかりませんが、ひどい打ち身でしたからね」


言いながら体を支える八戒の手を借りて、ベッドに戻る


再び横になった優姫は、大きくひと息吐き出した


八戒「差し支えなければ、何があったのか話して頂けますか?」


優姫「話す、ねぇ・・・」


八戒「あんな人気のない場所で、血塗れで倒れていたんですし・・・もしかしたら、力になれるかもしれませんからね」


優姫「・・・・・・オレどこにいたの?」


八戒「え?」


悟浄「人気のねぇ森ん中だよ。覚えてねぇのか?」


優姫「行った覚えもねぇし」


八戒「誘拐・・・に、しては扱いが雑ですし。そういう趣味嗜好なら、話は別ですが」


悟浄「お前、今さらっとやべぇこと言ったぞ?」


悟空「なぁ、ホントになんも覚えてねぇの?」


優姫「なんもとは言ってない。覚えてるよ、気を失う前の事は」


悟浄「って、覚えてんのかよ!?」


優姫「覚えてないなんて誰が言ったんだよ。森に行った覚えはないって言ったんだけど」


八戒「確かにそうですね」


悟浄「納得してんじゃねぇっての」


優姫「・・・・・・話してもいいけど、信じるか信じないかは自分で決めてよ。オレは知らん」


三蔵「・・・どういう意味だ」


優姫「そのまんま、言葉の通りだ。他に意味なんてないよ」
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