ワンピース《サボ》

□次元を渡って
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高校に入学してから、2ヶ月が経った



しかし玲衣には友達は出来ず、クラスメート達ともあまり良い関係を築けてはいなかった



常に一匹狼のような雰囲気を放つ彼女には、誰もが近寄り難いと思っている



それが一番の原因だった



6月・梅雨の時期



この年の梅雨は最悪だと言えた



だがある者はラッキーだと思うだろう



台風の影響により学校は休校



付近の川は増水し、近付くのは危険だと言われている



休校とは言ったが、実際に警報が発令されたのは丁度2限目の辺りだった



ひとり帰路を急ぐ玲衣



彼女は家に帰るには、川の近くを通らなくてはならないからだ



増水していると担任から聞き、早足で帰っている



玲衣〈思ってたより水増ししてる・・・早く帰ろ〉



足元は既に浸水していて、足首は完全に水に浸かっている



いつ決壊するかもわからないような増水の仕方だ



今回の台風の規模は、それほど大きいらしい



川の中間地点に来た時、最悪の事態が玲衣を襲った



ついに川の水が勢い良く溢れ出し、彼女に襲い掛かってきた



玲衣「!?」



波が玲衣の身体を拐い、逃げる間もなく呑み込まれた



流れに逆らえず、いつの間にか荷物を手放してしまった上、右も左も上も下もわからなくなる



今どこを流されているのかもわからない



そのせいか、彼女は気付くのに遅れてしまった



少し濁っていたはずの水が、暗い青色にはっきりと見えはじめたことに・・・



波の荒れ方も変わってきた



そのおかげか、泳ぐ余裕が出来たので必死に身体を動かし、なんとか水から顔を出す



玲衣「!!?」



玲衣〈な、なんで・・・!?〉



そこは川でもなければ、彼女の生まれ育った地元の街並みでもない



どこまでも広く、どこまでも遠く、見渡す限りの青一色



夜の暗闇がその青を暗い色に見せる



荒れる波は川の水ではなく海



玲衣が顔を出したのは海面から



だが地元の近くには海などない



そこまで流されるわけがない



玲衣〈うそ・・・うそ・・・うそ、うそ・・・!なんで?どうして・・・!?〉



頭の中が混乱し、上手く思考が回らない



そんな玲衣を、自然は待ってはくれない



後ろから高波が上がり、玲衣に襲い掛かる



再び荒波に呑まれ、何度も必死に海面に顔を出して酸素を取り込む



だがこのままでは保たない



彼女は今まで思ったことも口にしたこともない言葉を、心の中で必死になって叫んだ



玲衣〈助けて・・・!!〉



声にならないその叫びは、果たして誰かに届くのか−−?
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