最遊記

□序章
2ページ/4ページ




八戒「・・・なるほど。にわかには信じられない話ですね」


三蔵「フンッ、まるで夢物語だな。有り得ん話だ」


優姫「言うと思ったよ」


悟浄「見上げるくらいに高いビルとかいう建物・・・当たり前のように多くの連中が持ってる鉄の車・・・なにより妖怪のいない世界、か」


悟空「なぁなぁ、美味い食い物もいっぱいあるんだろ?すげぇ!いいなぁ」


悟浄「てめぇは黙ってろ、バカ猿」


悟空「猿って言うな!赤ゴキブリ河童!」


悟浄「んだとこのチビ猿!」


スパパァン


三蔵「うるせぇんだよ、馬鹿どもが」


優姫「・・・どっから出た、そのハリセン?」


八戒「あはは。すみません、うるさくて」


優姫「・・・別に」


八戒「ですが、優姫さんの言う事が本当だとして・・・今の世の中に、そんな場所があるとは思えませんが・・・」


優姫「まあ冷静に考えれば、トリップとか別次元に来たとか・・・いろいろあるけど」


悟浄「マジで冷静だな、あんた」


優姫「ここでオレが慌てふためいて、何かが解決するってんなら話は別だけど。そういうわけじゃなさそうだし。第一、ここでオレが悲観したって、困るのはそっちなんじゃないの?」


三蔵「わかってんじゃねぇか」


八戒「三蔵。でも優姫さん、帰りたいとは思わないんですか?」


優姫「・・・・・・そう思うのが、普通なんだろうな」


悟浄「そりゃあ、まあ・・・家族とかダチとかもいるだろうしよ」


優姫「友達なんかいないよ。親は生きてるけど、それだけ。特別仲が良いわけでも、悪いわけでもない。お互い無干渉だから、オレが事故った事もどうでもいいんじゃないか?知らんけど」


悟空「な、なんだよそれ?自分の子供なのにさ」


優姫「世の中、自分の子供を愛する親ばっかじゃないってわけさ。じゃなきゃこんな風に育たないって」


八戒「事情はなんとなくわかりましたが、それでも娘の一大事を完全無視はないと思いますけど・・・」


「「「・・・え?」」」


悟空「は、八戒?」


悟浄「お、お前今・・・なんつった?む、娘って・・・娘ぇ!?」


八戒「おや、皆さん気付いてなかったんですか?」


悟浄「気付くかぁ!」


優姫「オレもよく間違われる」


悟浄「訂正くらいしろよ」


優姫「聞かれなかったから」


八戒「あはは・・・」


しれっと言う優姫に、思わず苦笑する八戒


三蔵「で、貴様はこれからどうするつもりだ?」


優姫「・・・さてね」


八戒「ひとまず、しばらくの間は安静にしていてくださいね。といっても、今はまだ満足に動けないでしょうけど」


優姫「う・・・」


八戒「そういうわけですから三蔵、彼女が回復するまでは・・・構いませんよね?」


三蔵「・・・・・・勝手にしろ」


優姫「・・・オレの面倒見る義理も義務も、あんた達にはないと思うけど」


悟浄「ま、助けたのは俺らなわけだし。その責任くらいは果たすさ」


八戒「そうですね。助けてお終い、なんて無責任な事はしたくないですからね」


優姫「・・・」


体が動かないのは事実だからか、変に意地を張っても仕方ないと世話になる事にした


とはいえ、主だった介護は八戒がしてくれたのだが


悟空も手伝ったし、悟浄も手伝いを名乗り出た


が、悟浄に関しては優姫が拒否した


三蔵はほぼ無干渉だった


だが、いつ出発できるのか気にしてなのか、時々八戒と共に部屋に来ていた


優姫の回復は、彼らが思った以上に早かった


数日経つ頃には体を起こせるようになり、さらに数日後には部屋の中くらいなら歩き回れるくらいに


優姫「買い物?」


八戒「ええ。リハビリも兼ねて、僕らと買い物に行きませんか?」


優姫「・・・・・・まあ、ついて行くだけなら」


八戒「大丈夫、荷物持ちには悟空と悟浄が来てくれますから。優姫さんはただ、一緒に歩くだけでいいんです」


優姫「・・・・・・わかった」


少し悩む様子だったが、了承した優姫と町に出た


本当について来るだけでいいらしく、荷物は全て男3人で分担して持っている


優姫「・・・ねぇ、なんか持つ?」


悟浄「優姫ちゃんはいいの、俺らが持つからさ」


優姫「ちゃん付けやめろ」


悟空「いつもの事だし、全然平気だからさ。優姫は気にするなよ」


優姫「・・・オレひとりなんも持ってないってのも、ちょっと気にする」


八戒「・・・・・・んー・・・そうですね・・・では、こちらをお願いできますか?」


そう言って彼が渡してきたのは、三蔵に頼まれた煙草が入った袋だ


比較的に軽い荷物である事に、少し不満を持った


だがそれに気付いたらしい八戒が、先に口を開く


八戒「優姫さんは病み上がりですからね。まずはこれくらいからリハビリ、という事で」


優姫「・・・」


女性である彼女に、あまり重い物を持たせたくないというのが本音だ


だがそれでは彼女は納得しないだろうと考え、病み上がりだからという理由を告げた


これなら納得するだろうと思ったのだが、彼としてはそれも本音だ


八戒の思惑通り、渋々と納得したらしい優姫が受け取った


悟空「なぁ、優姫って年いくつなんだ?」


悟浄「バカ!女の子に年齢なんてもん聞くんじゃねぇよ!」


悟空「え、なんで?」


優姫「別に気にしないよ、オレは。18だし、まだ年を気にするような年齢じゃねぇし」


八戒・悟浄「「え?」」


悟空「18って、オレと同じじゃん!」


悟浄「・・・優姫ちゃん、18歳?」


優姫「悪い?」


八戒「あ、いえ・・・もう少し下かと・・・15、6歳くらいだと思っていたので、つい・・・」


優姫「あぁ・・・たまに言われる。洋服だと。和服の時は逆に見られる事が多いけど」


悟浄「着るのか、和服」


優姫「着るよ、和服」


今の優姫は、黒いハイネックに青い短パンという、かなりラフな格好をしている


少し出掛けるだけの用事で着ていた服なのだから、ラフなのは当然とも言えた


まさか出掛けて少しの所で事故に遭い、その格好のままトリップしてしまうだなんて・・・一体誰が想像できると言うのだろうか


悟浄「ちょっと見たい気もするな、優姫ちゃんの和服」


優姫「今はないから無理。あとちゃん付けはやめろ」


八戒「そういえば優姫さん、今の服以外に着る物が見当たりませんね?」


優姫「あるわけねぇじゃん。予期してなかった事故に遭って、死んだと思ったら右も左もわからん世界に飛ばされてたんだ。旅の用意揃ってたら怖いだろ、逆に」


八戒「た、確かにそうですね」


優姫「・・・ところで、この町って住み込みで働けそうな店ってあるの?」


八戒「探してみないとわかりませんが・・・」


悟空「なんで?」


優姫「買い物してる時に見てたけど、通貨が違うんだよ。つまり今のオレは無一文。家なんて借りられる状況でもねぇし、住み込みとか寮がある所の方が都合が良いんだよ」


悟浄「なるほどなぁ」


優姫「本当はいくらか事情を知ってるあんた達といた方が都合がいいけど、できるわけないってわかってるし。なにより、あいつが許すわけねぇだろうしな」


悟空「あいつって、三蔵?」


悟浄「まあ、確かに三蔵はなぁ」


八戒「僕達の旅は、常に危険が付いてまわりますからね。さすがに難しいでしょう」


優姫「わかってるって。連れてけなんて言わないから、安心しろよ」


八戒「この町は治安も良さそうですし。過ごし易いと思いますよ」


優姫「・・・・・・あっそ」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ