ワンピース《ロー》

□政府の少女兵
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クローゼ「・・・・・・ハァ・・・オレになんか用?」



無言で歩いていたクローゼは足を止め、ため息を吐いてから振り返る



先程から尾行してくる気配に嫌気が刺し、気付いてるから出てこいと促したのだ



少しして路地の影から姿を現したのは、長身で細身の男だった



目の下には隈があり、身長と同じくらいはある大太刀を持っている



そこに刺青と白い毛皮の帽子ときたら、思い当たる人物はひとりだけ



クローゼ「何か用か、死の外科医。オレはお前の世話になるような怪我人じゃないぞ」



そう、死の外科医の異名を持つ海賊、トラファルガー・ローだ



ロー「見りゃわかる」



クローゼ「だったら帰れ、面倒くさい」



ロー「お前、政府の殺人人形なんだってな?」



クローゼ「何?今更オレに興味でもあるわけ?物好きだな」



ロー「今更?」



クローゼ「?なんだよ、覚えてたから声掛けたわけじゃないのか?」



ロー「あ?」



クローゼ「・・・・・・いやいい。記憶にないなら」



ロー「どういう意味だ?」



クローゼ「だから、覚えてねぇんならいいって。面倒くさいから。それに忘れててくれてんならその方がいい、オレ的には」



ロー「・・・」



やはり、見覚えがあるのは間違いないようだ



だがはっきりと思い出す事ができない



おまけに、本人は話す気がないときた



しばらくはすっきりしないままだろう



クローゼ「で、なんの用?オレお前が思ってるより暇じゃないんだけど」



ロー「さっきのあれ、どうやった?」



クローゼ「さっきのあれ?」



ロー「武器破壊だ。あんなちっぽけなシルバーナイフ1本で、剣を簡単にへし折っただろ?芯を完璧に捉えればできるだろうが、シルバーナイフなんかでできるとは思えねぇ」



クローゼ「なんかカラクリがあるのか、それを聞きにわざわざ追っ掛けてきた。とでも?尾行してまでか?」



ロー「・・・」



クローゼ「マジかよ、面倒くさい・・・」



本気で、心底面倒くさいと言いたげな顔をする



そこまでかと突っ込みたくなったが、なんだか無駄なような気がしたのでやめた



クローゼ「・・・・・・別に。お前が気になるようなタネも仕掛けもないよ。まあ、医療に関わる者としてなら、少しは興味あるかもしれないけどな」



ロー「医療に関わる者としてなら、だと?」



クローゼ「ま、教えてやんねぇけど」



べっ、と小さく舌を出して言うクローゼ



悪戯をした子供を見ている気分だ



いや、実際のところ子供なのだろう



自分の身長が高いのもあるかもしれないが、それを踏まえてもクローゼは小柄だ



パッと見、クローゼの身長は推定160前半



男でこの身長なら10代後半くらいだろう



ロー「ガキのくせに、生意気な事言ってんじゃねぇよ」



クローゼ「ガキって言うな、ムカつくから」



「クローゼ!!」



クローゼ「あ?」



ローにとっては背後、クローゼにとっては正面から、名前を叫ぶように呼びながら走ってくる町人がいた



その町人には見覚えがある



クローゼ「でかい声で呼ぶな、恥ずいな」



「す、すまん・・・!そんな事より、今すぐ来てくれ!さっきバーでケチ付けてた海賊が、他の海賊に絡んだんだよ。お前らの酒を寄越せって。断わった海賊とドンパチやりそうな雰囲気になっちまってんだ!」



そうだ、薄っすらとしか記憶にないがバーにいた客のひとりだ



クローゼ「はぁ?面倒くさいな・・・で、どっちも喧嘩腰なわけ?」



「いや、絡まれた方の海賊は穏便に済ませようとしてくれてる。けど絡んだ方の海賊が武器構えてて、いつ向かってくるかわかんない状況だからな。一応、絡まれた方の海賊も、武器を構えてはいるけど・・・」



クローゼ「攻撃を仕掛けたりとか、挑発とかはしてねぇと」



「ああ!」



クローゼ「ふぅん・・・で、どこの海賊だよ?その絡まれたお可哀想な海賊は」



「揃いの白いツナギを着た海賊だよ。あ、でもなんか、オレンジのツナギを着た白熊もいたような・・・」



クローゼ「は?」



ロー「ハァ・・・」



クローゼ「なんでお前がため息吐くんだよ?」



ロー「・・・その、お可哀想な海賊ってのはうちのクルーだ」



クローゼ「・・・・・・マジで?」



ロー「マジで」



クローゼ「これまた面倒くさいことに」



ロー「嘆きてぇのはこっちの方だ」



「お、おい。クローゼ・・・」



クローゼ「・・・まあ、死の外科医のクルーなら、問題ないだろう。たぶん。だからまあ、締め上げるのはあいつらだけで良さそうだな」



面倒くさそうにしながらも、頭を掻いて少し髪を乱すクローゼ



この時初めて見えたのは、中性的で整った顔立ち



少女とも少年とも取れる、美しい顔立ちだった



クローゼ「とりあえず・・・締めるか。で、どこ?」



「こ、この先の大通りだ」



クローゼ「了解。で、お前はどうする?」



ロー「あ?」



クローゼ「まあ、来るとは思うけど。お前は手を出すのか、死の外科医?」



ロー「出すか。第一、あんな雑魚みてぇな海賊にやられるようなクルーはいねぇからな。いたら俺がとっくにバラしてる」



クローゼ「あー・・・それってマジの方?それともお前の能力の方?」



ロー「後者だ」



クローゼ「ならいい」
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