ワンピース《ロー》
□政府の少女兵
2ページ/8ページ
クローゼ「・・・・・・ハァ・・・オレになんか用?」
無言で歩いていたクローゼは足を止め、ため息を吐いてから振り返る
先程から尾行してくる気配に嫌気が刺し、気付いてるから出てこいと促したのだ
少しして路地の影から姿を現したのは、長身で細身の男だった
目の下には隈があり、身長と同じくらいはある大太刀を持っている
そこに刺青と白い毛皮の帽子ときたら、思い当たる人物はひとりだけ
クローゼ「何か用か、死の外科医。オレはお前の世話になるような怪我人じゃないぞ」
そう、死の外科医の異名を持つ海賊、トラファルガー・ローだ
ロー「見りゃわかる」
クローゼ「だったら帰れ、面倒くさい」
ロー「お前、政府の殺人人形なんだってな?」
クローゼ「何?今更オレに興味でもあるわけ?物好きだな」
ロー「今更?」
クローゼ「?なんだよ、覚えてたから声掛けたわけじゃないのか?」
ロー「あ?」
クローゼ「・・・・・・いやいい。記憶にないなら」
ロー「どういう意味だ?」
クローゼ「だから、覚えてねぇんならいいって。面倒くさいから。それに忘れててくれてんならその方がいい、オレ的には」
ロー「・・・」
やはり、見覚えがあるのは間違いないようだ
だがはっきりと思い出す事ができない
おまけに、本人は話す気がないときた
しばらくはすっきりしないままだろう
クローゼ「で、なんの用?オレお前が思ってるより暇じゃないんだけど」
ロー「さっきのあれ、どうやった?」
クローゼ「さっきのあれ?」
ロー「武器破壊だ。あんなちっぽけなシルバーナイフ1本で、剣を簡単にへし折っただろ?芯を完璧に捉えればできるだろうが、シルバーナイフなんかでできるとは思えねぇ」
クローゼ「なんかカラクリがあるのか、それを聞きにわざわざ追っ掛けてきた。とでも?尾行してまでか?」
ロー「・・・」
クローゼ「マジかよ、面倒くさい・・・」
本気で、心底面倒くさいと言いたげな顔をする
そこまでかと突っ込みたくなったが、なんだか無駄なような気がしたのでやめた
クローゼ「・・・・・・別に。お前が気になるようなタネも仕掛けもないよ。まあ、医療に関わる者としてなら、少しは興味あるかもしれないけどな」
ロー「医療に関わる者としてなら、だと?」
クローゼ「ま、教えてやんねぇけど」
べっ、と小さく舌を出して言うクローゼ
悪戯をした子供を見ている気分だ
いや、実際のところ子供なのだろう
自分の身長が高いのもあるかもしれないが、それを踏まえてもクローゼは小柄だ
パッと見、クローゼの身長は推定160前半
男でこの身長なら10代後半くらいだろう
ロー「ガキのくせに、生意気な事言ってんじゃねぇよ」
クローゼ「ガキって言うな、ムカつくから」
「クローゼ!!」
クローゼ「あ?」
ローにとっては背後、クローゼにとっては正面から、名前を叫ぶように呼びながら走ってくる町人がいた
その町人には見覚えがある
クローゼ「でかい声で呼ぶな、恥ずいな」
「す、すまん・・・!そんな事より、今すぐ来てくれ!さっきバーでケチ付けてた海賊が、他の海賊に絡んだんだよ。お前らの酒を寄越せって。断わった海賊とドンパチやりそうな雰囲気になっちまってんだ!」
そうだ、薄っすらとしか記憶にないがバーにいた客のひとりだ
クローゼ「はぁ?面倒くさいな・・・で、どっちも喧嘩腰なわけ?」
「いや、絡まれた方の海賊は穏便に済ませようとしてくれてる。けど絡んだ方の海賊が武器構えてて、いつ向かってくるかわかんない状況だからな。一応、絡まれた方の海賊も、武器を構えてはいるけど・・・」
クローゼ「攻撃を仕掛けたりとか、挑発とかはしてねぇと」
「ああ!」
クローゼ「ふぅん・・・で、どこの海賊だよ?その絡まれたお可哀想な海賊は」
「揃いの白いツナギを着た海賊だよ。あ、でもなんか、オレンジのツナギを着た白熊もいたような・・・」
クローゼ「は?」
ロー「ハァ・・・」
クローゼ「なんでお前がため息吐くんだよ?」
ロー「・・・その、お可哀想な海賊ってのはうちのクルーだ」
クローゼ「・・・・・・マジで?」
ロー「マジで」
クローゼ「これまた面倒くさいことに」
ロー「嘆きてぇのはこっちの方だ」
「お、おい。クローゼ・・・」
クローゼ「・・・まあ、死の外科医のクルーなら、問題ないだろう。たぶん。だからまあ、締め上げるのはあいつらだけで良さそうだな」
面倒くさそうにしながらも、頭を掻いて少し髪を乱すクローゼ
この時初めて見えたのは、中性的で整った顔立ち
少女とも少年とも取れる、美しい顔立ちだった
クローゼ「とりあえず・・・締めるか。で、どこ?」
「こ、この先の大通りだ」
クローゼ「了解。で、お前はどうする?」
ロー「あ?」
クローゼ「まあ、来るとは思うけど。お前は手を出すのか、死の外科医?」
ロー「出すか。第一、あんな雑魚みてぇな海賊にやられるようなクルーはいねぇからな。いたら俺がとっくにバラしてる」
クローゼ「あー・・・それってマジの方?それともお前の能力の方?」
ロー「後者だ」
クローゼ「ならいい」