〜小説〜
□『夕焼け小焼けで遊びましょ』
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それは、自分で言うのもおかしいけれど、特にやることがなく、暇を持て余している時だった。
「そーじー!またな〜!!」
「今度はかくれんぼしような〜!!」
子供たちの元気な声が夕焼けで染まる屯所内に響く。
また今日も遊んでたんだ、沖田さん。
そう思って振り返ると、足もとに薄紅色の生地に緑色の装飾がされている毬が転がってくる。
「・・・子供たちのもの、かな?」
忘れて帰ってしまったのかもしれない。
私は何となくそれを手に取ってみる。
懐かしいなぁ。
父様のお仕事を手伝い始めた頃、まだ私は小さかったから、患者さんの中には私に玩具をくれる人もいた。
その中にはもちろん毬も含まれていて。
今は家に大切に置いてある。
きっと、埃だらけになってしまっているだろうけど。
「懐かしいな」
そう呟き、小さい頃の思い出を思い出しながら、その小さな毬をついてみる。
ぽん、ぽん、ぽん・・・と、一定の間隔で音が刻まれる。
なんだか楽しくなって、鼻歌を歌いながら毬をついていると、どこからか視線を感じて顔を上げる。
「・・・あっ」
当たり前なんだけど、そうなんだけど・・・
あまりに音もなく、存在感もなく、その人はそこに立っていて、驚きの声を上げずにはいられなかった。
驚いたと同時に、毬をついていた手を口元に持っていったため、毬はつかれることなくころころ・・と、
私のことを腕を組みながらニヤニヤと見つめる人の足もとへ転がる。
「み、見てたんですか!?沖田さん!!」
「うん。楽しそうに鼻歌歌いながら毬を突くまだまだお子様な千鶴ちゃんを見てたよ、僕は」
「わ・・!わざわざ説明しないでください!!」
きっと真っ赤になって慌てている私を見て、カラカラ・・・と笑う沖田さんには、少しばかり疲れの色が見える。
「沖田さん、もしかしてお疲れですか?」
「・・・うん?」
いつものようにはぐらかすような笑顔を私に向けると、そうだ。と何か思いついたようにぽんっと手を叩く。
「遊んであげるよ、千鶴ちゃん」
ほら、何したいか言ってごらん?
そういたずらっ子のような笑顔を浮かべた彼に、私は困った笑顔を返す。
私の問いに答えが返ってこないのは、そこに触れてほしくないからだろうから、それはいいとして。
「えっと・・遊んで、くれるんですか?」
「うん。千鶴ちゃんと遊んであげる」
依然としてニコニコしている沖田さん。
「あ、それとも千鶴ちゃんで遊んであげても―」
「そ、それは絶対に嫌です!!!」
悲鳴にも似た声で否定した私を見て、また楽しそうに笑う。
「・・・で、冗談はそこまでにして。
まだ明るいし、少しだけなら遊んであげられるよ?
ねぇ、なにしたい?」
その問いに、私は今思い付くだけの遊びを上げる。