〜小説〜

□『ほっこりこたつ』
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しんしんと雪が降る、ある冬の日。

私は家事を一通り終えて、リビングのこたつへ入る。


がやがやと笑い声がテレビから流れてくる中、

私の旦那さんはそれをテーブルにつっぷして眺めている。




「総司さん、目が悪くなってしまいますよ?」




彼は私の声に、うん、と言うだけで、全く改善しようという気がないらしい。


私がもう一度名を呼ぶと、今度は何も返事が返ってこない。


「・・・眠いのですか?」


ふと思い立って尋ねてみれば、少しね。と小さく返事をした。



「・・・・」


「・・・・」



そんな旦那さんに少しの苦笑を洩らした私は、

たぶん、彼が見ているようで見ていない・・・

そんなバラエティー番組へと目を向けた。




芸人さんが一発芸をしていたり、

歌を披露していたり・・・・。


年末が近づいてきていることを感じさせる内容だった。




「・・・ふふっ」



私がある芸能人のエピソードに笑うと、

突っ伏していた総司さんはくるり、と顔をこちらへ向けてきて、




「面白い?」




と聞いてきた。


私は、はい。と答えて、




「総司さんは、あまり面白くないのですか?」


と尋ねた。



「つまらない」



と、あまりにも即答だったので、少し困っていると


「どれもありきたりで。


・・・まだ井吹くんあたりと話してたほうが面白いよ」




「井吹くん、ですか」



私は、懐かしい名前がその口から出てきたことに少し驚きつつも・・・。


本当に困った人。


そう思ったのだった。




「・・・つまらない」




もう一度そういうと、また私から目を離し、反対側へと顔をそむけた。


・・・とかいって、なんだかんだ見てるじゃないですか。



「・・・もう」



私の旦那さんといえば、言ってることとやってることが違うことはよくあるけれど。


今日は少し・・・ご機嫌斜め?





「総司さん」


「・・・・何」


「どこかお加減がよろしくないんですか?」


「・・別に」




いつもなら、


何?そんなにかまってほしいの?しょうがないな。


・・・といった感じで絡んでくるのに。


今日は感情の籠らない、淡々とした短い返事ばかり。


やっぱり今日はご機嫌斜め。



そんな旦那さんを見て、困った、とも思う私だけど・・・


それでも・・・








「・・・・ッ!?」





とても、愛おしいと思ってしまうのは





「・・・・・・な、に」





惚れた弱み、というやつなのです。
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