独りの悪魔
□prologue
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ポツリ、ポツリと雨粒が音を立てて降りはじめる。
大通りの片隅…
普通ならあるはずのない大きなダンボール。
しかし誰も気にしない…まるで気付いていないかのように。
隣を急ぎ足で駆け抜ける。
ある人は傘をさして、ある人は鞄を頭にのせて。
僕はダンボールの中からそれを見ていた。
どうして僕がここにいるのか解らない。
でも、捨てられたことは確かだ。
捨てられる理由は解ってる。
普通の人間から生まれたのに僕の目は赤くて耳も尖ってる。
それが原因だろう。
僕を此処に置いていった人たちはまるで肩の荷が下りたかのように
清々しい顔で何処かへ行ってしまった。
あれは一般的に言えば親というものなんだろう。
でも僕にとってはただの血の繋がりがあるだけの赤の他人だ。
降り続く雨に体力を奪われて、
とても寒くて、
お腹がすいて…
もう寝てしまおうかと思ったとき、
僕に降りかかっていた雨が止んだ。
いや、何かに遮られた。
でも僕にとってはどうでもよくて、
早くこの世界から消え去りたかったんだ。
目を閉じるとき声が聞こえた…
低い声…でも優しそうな声だった
聞き取れなかったけれど。
(もし、また目が覚めることがあるのなら、
今度は僕を愛してくれる人がいればいいなぁ…)