独りの悪魔

□1炎
1ページ/1ページ



「(…?暖かい…?)」


この世界から消えてしまいたい、そう思って目を閉じたんだ。
なのになぜ暖かさを感じるんだろう。
あの人たちは死ねば何も感じなくなるって言ってたのに。


ゆっくりと目を開ける僕をのぞき込む四つの瞳。
吃驚して起き上がろうとするけれど体が動かない。


「驚かせたか?
悪いな、だが目が覚めてよかった。」


僕をのぞき込んでいた二人の子供…
といっても僕として変わらないようだ。


その二人を後ろに下げて顔を見せたのは
見た目とても怖そうなおじさん…
失礼かもしれないけれど僕からすればおじさんだからね、


とても低い声でどこか安心できる声でそう言った。
僕はこの声に聞き覚えがあった。


「おじさんが僕をダンボールから拾ってきたの?」


そう、あの雨の日に聞いた声。


「ああ、そうだ。
…お前らは今日から兄弟として生きろ。
仲良くしろよ。」


急に言われて吃驚した。
兄弟…?何だろうそれは。
おじさんに問いかけてみると驚かれた。
兄弟を知らないのかって呟いていたけれど
僕にはわからない。


「…二人ともいろいろ教えてやれ。
此奴の名前は…そうだな、ティラ。
ティラだ。」


そう二人の子供に言いつけて出て行ってしまった。
僕としては行き成り三人きりにしないでほしいのだけど…
そう思っていると青い目の男の子が話しかけてきた。


「俺の名前はリオン!
ジョージに付けてもらったんだぜ!
恰好いいだろ!」


ふふん、と自慢げに行ってくる少年、
リオン君…おそらくジョージっていうのは
僕を拾ってくれたおじさんの事なんだろう。
リオン君はとても活発そうな印象。
いや多分活発なんだろうなぁ。


「此奴はカリア、
訳あってあんま話しないみたいだけど良い奴だぜ!」


そういって黄色い目の女の子を僕の前に引っ張り出してきた。
冷たそうな印象を受ける瞳だけど、
とても可愛いと思った。


「話さない訳じゃない。
話そうと思わないから話さなかっただけ。」


…それってリオン君と話したくなかったって意味なのかな…?


「なっ!それって俺と話したくなかったってことかよ!?」


って喚くリオン君に頷くカリアちゃん。
カリアちゃんって正直者なんだね…
でも流石にリオン君が可哀想だからやめてあげて


ってカリアちゃんに告げると、
二人に呼び捨てで構わないと言われ
なんだか胸の奥が暖かくなった。
微笑んで胸を押さえているとリオン君が真面目な顔で切り出した。


「…兄弟になるんだから、秘密はなしにしようぜ。俺の出生…
カリアにも、話してなかったよな。
俺は普通の人間から生まれてきたんだ。
でも、目がこんな色でしかも耳も普通とは違って尖ってて、牙もあるし、尻尾もある。
そんな俺を俺を生んだ人間は気味悪がって捨てたんだ。
死んじまえ悪魔!って捨て台詞とともに。
んで、ジョージに拾われてここにいる。
…お前らは?」


「私も…同じよ。」


二人ともそういって僕を見た。
ああ、この二人は僕と同じなんだ。
二人とも悪魔の急所になる尻尾はしまってあるそう。
僕も二人に教えてもらってしまえたよ。


僕と同じ二人だからジョージは僕とこの二人を兄弟にって思ったんだね。
一つ息を吐いて二人の瞳を見詰めた。


「僕もさ。リオンと同じように捨てられたんだ。
もうこんな世界から消えてしまいたいって思ってた時にジョージに拾われたんだ。
あの人は僕に君たちという兄弟を、家族をくれた。
本当にありがたいや。」


微笑んでそう二人に告げると二人は呆気にとられたように
口を開けていたけどすぐに笑ってくれた。
急に抱き着かれて吃驚したけどね。
本当の家族に捨てられたからこそ、
出会えた新たな、とても大切になるであろう家族。



(捨ててくれてありがとう。
今ならあの人たちに笑ってそう伝えられるよ)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ