わたしのカミツレをあなたに
□葛藤
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「実紗!!」
鋭く名前を呼ばれた。
振り向くと、そこにいたのは堂上教官!?
「いい子だ、喋るな。」
と口を塞がれて、そのまま中へ連れて行かれる。
「すみませんでした、新聞。」
「いや、大丈夫だ。後で俺が行く。」
ありがとうございます、と郁ちゃんから預かったお金を渡す。
「お前、こうなるって知ってたんだろう。どうして外へ出た?」
「郁ちゃんが行くより良いかなって思って…。私なら何を言われても耐えられるし。でも体力が足りませんでした。」
と笑ってみせる。うまく笑えてるかな?
「どうにも動けなくなっちゃって…。来てくれてありがとうございました。」
「小牧と佐々木が戻ってきて聞いた。佐々木もお前ならこうするだろうと言っていた。」
そこで言葉を切ると、まっすぐに目を見られる。
「でもな、お前はもっと自分を大事にしろ。自分を犠牲にするな。」
「…っでも!」
「わかったな?」
うなづくと、気づかないうちに泣いていたらしく、涙が床にこぼれ落ちた。
「あ、すみません…大丈夫、です。」
頭を教官の肩に押し付けられる。
「笑わないから安心しろ。」
私、郁ちゃんじゃないのに。
堂上教官、こんなことしていいんですか?
しかもこれ、このあと噂になるよな…
冷静に考えられたのもはじめのうちだけ。
私が落ち着くまで、そのままでいてくれた教官に甘えることにした。