BOOK@

□海軍本部編A
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「バレちゃったね・・・・」

「アイツなら大丈夫だよぉ、口は堅いからねぇ」

気を使って出て行ってくれたらしく、黄猿はそれをいいことにアズリアを自分の膝の上に座らせる。
いきなり唇を重ね、2人の関係を確かめるように激しく濃厚なものだった。

「んっ………急にどうしたの?」

「ん〜ヤキモチかなぁ〜?」

「いい歳してヤキモチって…………」

もう一度唇を重ねる。
口端から収まりきらなかった唾液が流れ出し、彼女の胸元に落ちる。
黄猿は唇を離すとそれを舌先ですくい上げ、そのまま吸い付き赤い痕を残す。

「誰か来ちゃう……………」

「分かってるよぉ〜、これくらいはしないとねぇ?」

「もう……………」

膝から降りると冷めた紅茶を飲み、ソファーにうなだれた。
黄猿は新しい紅茶を入れるため執務室の中に備えてあるキッチンに向かう。

(白ひげ・・・・)

ふと白ひげの事が頭の中に浮かんだ。
この時代を作り上げた海賊の1人。
こんな形で合いまみえるのは残念だが、これも運命なのかと笑う。

「どうかしたのかぁ〜い?」

「何でもないよ・・・」

新しく淹れた紅茶を一口啜る。
マスカットの香りが鼻腔をくすぐり、とても心が落ち着く。
ふぅと息を吐くと、黄猿は隣りに座り手を握る。

「ボル、貴方は死なないでね………」

「ありがとうねぇ〜」

「白ひげの能力を侮らないで、奴が本気を出せば海軍本部だって簡単に壊せる」

そう世界さえも壊せる力を持つ白ひげ。
自分だってどうなるか分からない、しかし今は目の前の黄猿が心配だった。
いくら自然系とはいえ、ダメージを受けないわけはない。
白ひげも覇気の持ち主、覇気を纏った攻撃を受ければいくら自然系とて死ぬかもしれない。

大事な人が死ぬのはもう嫌だ。
彼女の暗い過去がそう叫ぶ。
あんな思いはしたくない。

「ボル、聞いて欲しい事があるの………」

「なんだぁい?」

「船の中で話した事………」

「あぁ〜、あの話しならぁ…………」

「違う、その後の事…………」

どうしても今話さなくてはならいと思ったアズリア。
彼女を負の連鎖から助けてくれたの
マシューの曾祖父あたる人が船長をしていた海賊団。
彼は命の恩人であり、自由を教えてくれた人でもあった。

助けてくれた後、彼女が能力者だと知ると売り飛ばすわけでもなく、船に乗せて仲間として扱ってくれた。
航海術、医学、歴史、戦闘実践、剣術、武術、料理、ありとあらゆる事を彼女に叩き込んだ。

それから数年で驚く程成長したアズリア。
覇気を持っている事に気がついた船長はその鍛練もしてくれた。

「そのお陰でロジャー、ニューゲートに並ぶ海賊になれた。今の私があるのは船長がいたから…………」

急に悲しそうな顔になる。
見かねた黄猿はそっと抱き寄せ頭を撫でる。
安心したアズリアは話しを続ける。

ある日海賊が襲撃してきた時だった。
その海賊たちは夜襲を仕掛け、瞬く間船は占領された。
奮闘したアズリアだったが、結局捕らえられ捕虜となった。
次々と殺される仲間たち、船長も例外ではなかった。

『お前は生きろ!アズリア!』

笑いながら死んでいった船長。
それを見たアズリアはそこからの記憶がなかった。

「気がついたら辺りは血の海、襲ってきた海賊たちは皆バラバラになってた」

「君がやったのかぁ〜い?」

「あたしの最初の悪魔の実【ドレドレの実】、相手に口付けして生命力のみを吸い取る悪魔の実の能力…………だけど、吸い取るのはそれだけじゃなかった」

「?」

「相手の悪魔の実の能力も吸い取ってしまう」

数知れない男と寝たことで、いつしか能力も吸い取っていた。
それが何の能力かも分からない。
だが、船長の死でそれが無意識に発動してしまった。

「恐らくは動物系の能力だとは思うんだけど、今もハッキリしないから分からないんだよね」

それから一週間、船長の亡骸を抱きしめたまま船に1人だけ残され海を漂っていた。
近くを通った商船に拾われ、そのまま近くの島まで連れて行かれた。
それから一年その島の人たちのお世話になり何とか立ち直った。

「それから、あたしは海賊団を立ち上げて……………まぁ何やかんやで今に至るわけだけど」

「その後も気になるねぇ〜?」

「後は仲間を集めたりとか、ロジャーとの喧嘩とか 、ガープとの喧嘩とか色々だよ?」

「ガープさんともやり合ったのかぁ〜い?」

ガープとは良きライバルだった。
奴が行く先々でワザと待ち伏せしたり、島に滞在中に一緒に飲み明かしたりと悪友でもあった。

センゴクとは常に戦闘だった。
会えば必ず『今日こそ捕まえる!』と意気込んでいた。だがお互い敵同士ながら尊敬していた。

「こんな感じかなぁ?つるちゃんは好んで前には出なかったし、よく一緒にお茶してたから」

「今と変わらないんだねぇ〜おつるさん」

話しが終わる頃には外はすっかり夜になっていた。
マシューは今頃甲板を行ったり来たりと歩き回っているだろう。
隊長の誰かが着いているだろうか、もしかしたら全員揃っているかもしれない。

「それじゃ、あたしは船に戻るね。明日の準備しなきゃいけないしさ…………」

「送って行こうかぁ?」

「!!!!…………大丈夫、どうやら迎えが来たみたいだしね」

真っ暗闇の外を目を凝らして見ると、大きな鳥らしき何かが居る。
窓を開けてやると、大きな翼をたたみながら窓枠に掴まりそれは人間の男性の姿へと変わっていく。

「船長迎えに来た」

「あぁ今行くよ」

「気を付けて帰るんだよぉ」

「ありがとう………」

2人して窓から飛び降りる。
男の体はまた大きな鳥へと変化しその上に彼女が乗り、そのまま船がある島の後ろ側へと姿を消した。

窓を閉め、アズリアが居なくなった部屋を見渡す。
寂しい、そんな感情が心を支配する。
依存している関係、そう言っても過言ではない。
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