BOOK@

□海軍本部編A
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『死なないで』

生まれて初めて言われた。
思い出すだけで顔が赤くなる。
誰かに心配された事などなかった黄猿は嬉しくて仕方ない。

「あーららら、何顔赤くしてニヤついてんの?いい歳したおっさんが」

聞き覚えのある声。
いつの間にか部屋に入り込んでいたのは青雉だった。
途端に顔からは笑みが消え、眉を寄せ嫌そうな顔をする。

「クザ〜ン、何度言えば分かるんだぁい?」

光輝く指先を同僚の眉間に向けて構える。
降参のポーズを取りながら、静かにソファーに座る。

「それでぇ〜、こんな遅くにぃ何の用だぁ〜い?」

「あー…………それなんだがな、明日の件で…………」

「わっしなら大丈夫だよぉ〜」

話しを遮って青雉を黙らせる。
私情を持ち込む程馬鹿じゃない。

「ならいいがな、一応立場ってのがあるんだそれはあんたも分かるだろう?」

「重々承知だよぉ〜」

「全く、いい性格してるよあんたは・・・・」

ティーカップを片付け、青雉専用のマグカップを持ってくる。もちろん中味はインスタントのコーヒー入り。
「サンキュー」と、受け取ると一口飲む。

時計を見るともうすぐ日付が変わる。
それぞれがどんな想いでこの戦争に参加するかは分からない。
青雉は仕事だからと、適当な理由かもしれない。
赤犬は・・・・・あいつはいつも通りだ。
では自分は?
仕事だから、海賊が憎いから、正義を守りたいから?


(アズリア・・・・)


彼女の為に、それが今はしっくりくる。
アズリアと一緒に居たいから、それで充分だ。
彼女との約束を守る為に戦おう。
そう心に誓った。









「ただいまー」

「船長〜逢いたかったよ〜!!」

船に戻ったアズリアは、甲板に降り立つといきなり少女に抱きつかれる。
その他にもアズリアの帰りを知った者たちがぞろぞろと姿を見せる。

「何とか間に合ったみたいですね?」

「皆元気そうで何よりだよ・・・」

「なぁ船長!大将とデキてるってホントか?」

「黙れスミノフ!!」

「何だ犬っころ、躾が足りねぇーようだな?」

到着そうそう始まった喧嘩。
隊長全員揃うと必ず一戦交えないと気が済まない。
毎度の事ながら頭を悩ませる。

「いい加減止めろ、海に沈みたいか馬鹿共が!」

「黙れよオオワシ、テメェだってさっきまで文句言ってじゃねーか?」

「付き合ってるし、ここ毎晩寝てる。これで満足か?分かったらさっさと中に入れ、明日は忙しいんだぞ!!」

「「「えぇーーーー!!」」」


突然の告白、驚きの余り隊長全員が固まった。そんな彼らを無視して自室へと向かう。
隠し事はしない、それがこの海賊団のルール。

「はぁー・・・・・」

部屋に着くと服を脱ぎ捨てベッドに横になる。

明日、世間に自分の事がバレる。
能力も、身体の事も何もかも。
段々と瞼が重くなる。
うつらうつらと眠気に襲われながら考える。
隊長たちは海賊たちを、自分は白ひげを。

「ぅん…………」

それから、それから、と考えるうちに眠ってしまった。
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