BOOK@
□頂上戦争A
5ページ/7ページ
「目標ー、麦わらのルフィと火拳のエース!!撃てーー!!」
「クソっ!間に合うか!!」
砲撃部隊の元に急ぐアズリア、だが逃げる両軍の人だかりにはばまれてしまい結局間に合わなかった。
ここまで来て終わるのか?
アズリアは爆煙が上がる先を見つめる。
【D】の名を持つ者ならこんな運命では終わらない。
「おっ、おい!何だあれ・・・・」
爆煙の中に浮かび上がる炎。
同時に炎の道が爆煙の中に出来る。
「オメェは昔っからそうさ、ルフィ!!俺の言う事もろくにきかねーで、ムチャばっかりしやがって!!」
「「うおおぉーー!!」」
全員が歓喜に包まれた。
待ちに待ったこの瞬間、どれだけ嬉しいことか。
喜びに湧く海賊たち、しかし一人だけはすでにその先を見ていた。
「聞けーー!野郎共ーー!」
歓喜の声を打ち消したのは紛れもない白ひげだった。
一番嬉しいはずの白ひげが厳しい顔で最後の船長命令をだした。
「今から伝えるのは最後の船長命令だ!!全員必ず生きて、新世界に帰還しろーー!!」
「白ひげ・・・・」
アズリアは直ぐに悟る。
奴はこのままここで死ぬ気だと。
「おれぁ、時代の残党だ!新時代に俺の乗り込む船はねぇ。」
傷付き、疲弊した身体に鞭打って白ひげは能力を最大にして大気に打ち込む。
「オオワシ・・・・お前は他の隊長たちを連れて退路を確保しろ、マシューには悪いがあのまま赤犬を抑えててもらう」
「船長は?」
「あたしはアイツの最後を見届ける」
「……………了解」
退却を始めた白ひげ海賊団。
ルフィ、エースも何とか一緒に逃げている。
海兵たちの戦力はやはりエースに集中している。
「船長ヤバいぞ!副船長が!」
白ひげ、黄猿の向こう側を見ると追い詰められているマシューの姿があった。
慌てて知らせにきたスミノフ、やはり赤犬相手では無理があるかと仕方なく向かう。
「いい加減諦めんかい、貴様等も白ひげもここで終わりじゃ・・・・」
「やはり大将相手に片手はキツいですね、こんな荷物がなければどれだけありがたいか・・・・・」
アズリアから預かったコートを未だに持ったまま赤犬と片手で交戦しているマシュー。
海軍大将相手に片手で戦うというのも凄い事だ。
マシューはアズリアとは違って足技ではなく、どちらかといえば拳を使った攻撃が得意なので苦戦を強いられるのは当然。
「死ね、犬噛紅煉!」
「くっ!」
「よっ!とぉーー・・・・」
間一髪でマシューを助けたアズリア、珍しく傷だらけのマシューを見た。
「コートの一つくらいまた買えばいいじゃん……………」
「そうは、いきませんよ…………大事なコートですから、ね……………」
隙をみた赤犬はエース、ルフィの追撃に向かった。
その場に座り肩で息をしているマシュー、これ以上の戦闘は無理だと見たアズリアは差し出されたコートを受け取る。
「お前は休んでな…………動けるようになったら白ひげのサポートに回ってくれ」
「船長…………」
子供をあやすようにマシューの頭を撫でる。
再びコートを羽織り赤犬の後を追う。
必死に退却する海賊たち。
海軍からの追撃を避けながら、湾頭近にある被害が無い船に向かう。
仲間がやられていくのを黙って見過ごすしかないエースは、込み上げてくる怒りを抑えながら逃げる。
「火拳のエースを解放した途端、即退散とはとんだ腰抜けじゃのぅ、白ひげ海賊団?」
「「なにぃー!!」」
赤犬からの挑発、誰もが足を止め殴り飛ばしたい気持ちではあったがここで止まればそれこそ赤犬の思う壷。
それでも赤犬は続ける。
「まぁ船長が船長じゃ、それも仕方ねぇか。白ひげは所詮、先の時代の敗北者じゃけぇ…………」
誰もが足を止めてしまう。
白ひげが敗北者?
違う、白ひげは、オヤジはこの時代を作った1人だ。
「取り消せよ、今の言葉!!」
真っ先に喰って掛かったのは、白ひげを尊敬し、愛してやまないエースだった。
他の海賊たちが必死になってエースに逃げるよう説得するが頭に血が上った今のエースには何も耳に入らなかった。
「止めろエース!」
それでも赤犬は白ひげを貶し、馬鹿にするような言葉を幾つもの並べていく。
エースの怒りも限界を迎え赤犬に向かって拳を繰り出す。
赤犬も好機とみて全力で繰り出す。
「お前に…………」
「ぬぅ!?」
「オメェは!?」
ぶつかり合う寸前で間に入ったのはエースよりも更に怒り心頭のアズリアだった。
「白ひげを語る資格はねぇーよ!!」
赤犬の顔面に右ストレートを決め殴り飛ばすと、エースの鳩尾に一発入れると黙らせた。
「早くこのバカを連れてけ」
「お、おぅ…………行くぞ!!!」
「やってくれたのぅ?」
口端から流れる血を拭いギロリとアズリアを睨みつける。
両腕をマグマ化させながらゆっくりとアズリアに近づく。
「何を言われようとこの時代を作り上げたのは間違いなく白ひげだ!!」
「貴様も先の敗北者じゃけぇ!白ひげと共に朽ち果てろーー!!」
ぶつかり合う両者の拳。
互いに引けない思い。
白ひげの思いを知っているからこそアズリアは尚更赤犬を殺してやろうと思った。
覇気を纏っているからとはいえ、相手はマグマ。
肉が焼けるような臭いが立ち込める。
「覇気を纏ったから言うて、素手でわしに勝てる思うちょるんか!!」
「勝てるよ………」
渾身の力を込めて赤犬の拳を押し返す。
間髪入れずに赤犬に更なる攻撃を出す。
先ほど戦った時よりも明らかに力も速さも桁違いだった。