BOOK@
□シャボンディー編@
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静かな時間が流れる。
風も無く、日光浴をするにはまさに絶好の日和であった。
そんな時だった。
慌ただしく海賊たちは荷物を積んだり、出航をしたりと突如として忙しくなる。
「何だか外が騒がしいわね・・・」
「先程部下から連絡が有り、どうやらヒューマンオークションにて海賊が暴れているそうです」
悠長に会話をしていたのは停泊して一隻の海賊船からだった。
その甲板の中央に、大きな椅子に水着姿でもたれかかり、大きめなサングラスを掛けて日光浴を楽しむ一人の女性がいた。
その隣りには全身白いスーツに身を包んで金縁の眼鏡をした若い男性が立っていた。
「てことは、海軍が動くよね?」
「そうでしょうね」
「ふーん・・・・・」
そこで会話は途切れ、大小様々なシャボンが浮かぶ空を眺めていた。
ここは、偉大なる航路シャボンディー諸島ーーーーー
新世界に入る為に海賊は必ず立ち寄る場所。
また、観光地としても有名で常に多くの人で賑わっている。
「ねぇマシュー・・・・・」
突然甘えるような声でマシューと呼ばれた青年は嫌な予感がした。
「ダメですよ」
「まだ何も言ってない」
「ダメと言ったらダメです」
彼女の考えは分かる。
どうせ騒ぎを起こした海賊を見に行くつもりなのだ。
折角のバカンス。
余計な事を考えず純粋に休みを楽しんでいたというのに倒事に首を突っ込むの辞めて欲しいと、心の底から願うマシュー。
「だったら船長命令」
「そんな命令は受け付けません」
サングラスを外し、つまらなそうにマシューを睨むと黙って1人で船内に戻ってしまった。
やれやれと、肩を落とし何も起きない事を祈りながら後に続いて中に入る。
着替えも終わり、Gパンに無地のTシャツとラフな格好に似つかわしくない黒いコートを羽織り船を降りようとしていた。
「アズリア船長どちらに?」
「ちょっと散歩にね〜」
「えっ!!今からですか!!?」
それを聞いた部下の一人が驚いた様子でアズリアを見つめた。
周りにいた部下たちも動揺してざわめきだす。
この様子を見たマシューは、何かしらの動きがあったのだと予測した。
「何か問題でもー?」
「先程街で聞いた話しでは海軍大将が来ると・・・・」
大将と聞いて、ますます楽しみが増えたアズリアは笑いながら船を後にする。
これは必ず問題を起こすと悟ったマシューは、部下に出航の準備だけして待機しているよう指示を出し、重い足どりで後を追いかけていった。