BOOK@

□新時代編@
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あの一件から一週間、再びあそこに行くとはアズリアも思わなかった。
重い足取りで重厚な扉の前に立つ。

コンコン!

「入れ」

「失礼します…………」

中に入ると、五老星の面々がお茶を飲みながらお菓子を食べていた。
こちらに来るように促されたが、断り入り口で話しを聞く。

「そう遠慮するな、どうだ?ショートケーキもあるぞ?」

「いえ結構です、それより話しってなんですか?こちらも忙しいんですが?」

「んっ?あぁ、それだがな……………インペルダウンから脱獄した囚人たちを捕まえて欲しいんだ」

「それは海軍の仕事では?」

「世間には公表していない、だからお前に頼んでいる」

「殺しても構わないと?」

「どのみち、死刑になる奴らだ。刑期が早まるだけのこと。違うか【漆黒の処刑人】?」

「分かりました、いつも通りに…………」

話しも終わったと思い、部屋を出ようとした時だった。

「1つ聞くが………………お前なら海軍本部次期元帥は誰が良いと思う?」

「誰と言われましても、そんなに目立った人物は居ませんが…………あえて挙げるなら、青雉が良いかと」

「何故そう思う?」

「黄猿は、彼は上に立ったら海軍辞めるって前に言ってましたし、赤犬は、彼の求める正義は余りにも露骨過ぎて、海賊を追いかけるあまり一般人すら見殺しにしかねない思想の持ち主ですからね?そうなると、青雉しか残りません。彼は、部下からも信頼されてますし、人当たりはいいし、もう少しやる気があれば良いかと思いますよ」

「そうか……………参考にさせてもらうよ」

ようやく話しも終わり、部屋を出るとそそくさとマリージョアを後にした。
船に戻ったアズリアは、甲板で待つ部下たちに出航するように指示を出す。

「船長行き先は?」

「海軍本部だ」











未だに戦争の傷跡が残る海軍本部。
修復工事は半分程度しか終わっていない。
それでも何とか機能はしている。

インペルダウンから脱獄した囚人たちを捕まえるために、大将以下、将校クラスも連日出動命令が出されていた。

「大忙しだな海軍」

「私たちの仕事が減るのは良いことじゃないですか?」

海軍本部の中を堂々と歩く2人。
目的は逃げ出した囚人たちの手配書。
顔が判らなければ捕まえようにも、無理な話しだ。

センゴクの部屋に近づくにつれて、何やら言い争っている声が聞こえてくる。

『だから俺は嫌ですって!!』

『なら、お前はサカズキに従えるのか?』

『っ!!!それはもっと嫌ですけど…………』

『仕方がないだろう、上から推薦するように言われてしまったのだから…………』

部屋の前に着いたのは良いが、入るに入れない。
だが、こちらも仕事として来ている以上、入らないわけにはいかなかった。

コンコン!

「誰だ?」

「取り込み中、失礼」

部屋に入ると、厳しい顔で詰め寄っていた青雉と困った顔をして椅子に座るセンゴクがいた。

「脱獄囚の手配書をもらいに来たんだけど?」

「連絡は受けてる、持って行け」

マシューが机から大量の手配書を持って行くと、青雉は無言のまま部屋を出て行ってしまう。

「全く…………」

「色々大変みたいだね?元帥辞めるんだって?」

「知っていたのか………………」

「まぁね」

「後任を誰にしようか迷っていてな……………」

「青雉なら任せられると?」

「あぁ、アイツなら部下の面倒見もいいし、部下からの信頼も厚い」

こんなにも悩んでいるセンゴクも珍しい。
マシューに先に船に戻るように言うと、アズリアは遠慮なくソファーに座る。
タバコを取り出して火を付けると紫煙を吐き出し話しを続けた。

「あたしも、老人たちに聞かれてね……………一応、青雉を推しておいた」

「そうか…………」

「上は何て?」

「老人たちは苛烈な人間を望んでいる」

上を向いて吐き出した紫煙を見ながら、赤犬か……と、呟く。

まぁ、確かに老人たちが求める思想と赤犬が思っている思想は合致している。
しかし、そうなれば、海軍はただの人殺し集団になるのは目に見えていた。

だからセンゴクは、柔軟な思考を持って臨機応変に対応出来るであろう人間、青雉を推薦しようとしていた。

「で、さっきの言い争いになったの?」

「あぁ、元帥になるのは嫌、サカズキの下に就くのはもっと嫌ときた……………」

「だったら…………実力で、決めるしか無いんじゃない?」

「“氷”に“マグマ”、勝負は見えているが……………」

「案外勝つかもよ?」

まさかこの一言で、元帥の椅子を賭けた決闘が行われるとは誰も予想出来なかった。
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