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□新時代編A
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本格的に囚人狩りが始まって約1ヶ月。
各地に散らばった隊長たちからは、連日捕縛したとの連絡が入ってくる。
海軍もサカズキを新しく元帥に迎えてから、大きく変わりつつあった。
海軍本部の移転。
新大将を本部内ではなく、異例とも言える世界徴兵による選出。
それは大々的にニュースとして取り上げられた。
「気合い十分か…………」
「これからは迂闊に本部には行けませんね?」
船を東に進ませながら、アズリアとマシューは新聞を眺めていた。
二日前にようやく、level6からの脱獄囚を1人を捕まえた。
正確には殺した。
【漆黒の処刑人】
彼女がそう呼ばれる理由は服装だけではない。
政府や海軍が手を出せない案件や事件を、人知れず闇に葬る姿からそう呼ぶ者も少なくない。
「見てください!!船長が載ってますよ!」
「ふぅ〜ん……………」
海軍の記事の後ろに大きく写真が載っていた。
見出しは
【遂に動き出した!!最強の女海賊!!】
「くだらない、それよりも時期に次の脱獄囚が居る島に着くよ…………」
マシューから新聞を取り上げ、上陸準備を始めた。
(今日は機嫌が悪いですね……………)
いつもなら話しに乗ってくるのに、今日に限って聞き流していた。
口調もどこか厳しく感じられ、マシューは部下たちに気をつけるように言いつけた。
「見えましたね、【ウスグライガナ島】」
「隠れるには最高だな」
かつては金鉱があり、一時期はかなり有名になった島だったが、世界政府が目を付け絞り取るだけ絞り、金が尽きた途端あっさりと捨てた。
5年足らずで島は廃墟となり、今は誰も居ない無人島。
海賊たちからすれば、隠れ家には最高の場所となっていた。
港だった場所に接岸し、上陸を果たしたアズリア。
廃墟とはいえ、建物などはそんなに傷んではいなかった。
「さてと………」
「どこから攻めますか?」
「まずはこの港からだ、倉庫はもちろん、木箱の中、排水溝などあらゆる場所を探せ」
二手に別れ倉庫内を探し始める。
高く積まれた木箱などは、下に叩き落として中身を調べた。
「はぁーー……………」
「顔色が優れませんが、大丈夫ですか?」
「心配するな、寝不足なだけだ………………」
タバコ吸いながら頭を押さえ、険しい顔つきで作業を見ていた。
次々に倉庫から部下たちが出てくる。
めぼしい成果が無かったと分かると、次の捜索地点に向かった。
閑散とした町並み。
部下たちはそれぞれ、家屋に入っていき捜索を開始した。
「船長ーー!!誰か居た形跡が!!しかも、1人じゃないぜーー!!」
「船長ーー!!こっちもだ!!」
「団体様か、迷惑だな………………」
「船が襲われる危険がありますね……………」
「なら、それを利用しようじゃない?」
(奴ら行ったか?)
(あぁ………森に入ったぜ!)
(船を奪って逃げるぞ!!)
数名の囚人たちが、物陰からアズリアたちが森に入っていくのを確認すると、町外れにある納屋に向かう。
そこには、level4からの脱獄囚とlevel3からの脱獄囚合わせて20人がギュウギュウになって入っていた。
「行くぞ、お前ら!!」
「「オオォォォーーーー!!」」
斧やナタなど、そこらにあった物を武器の変わりに持ち出し港に急いだ。
見張りの部下たちは、突然現れた囚人たちに驚き銃を構えたが数に負けてしまう。
「大人しく船を渡しな」
「……………やはり隠れてましたか」
倉庫内からマシューが部下を引き連れて現れる。
更に後ろの森からは、アズリアと数名の部下が姿を現す。
完全に囲まれた囚人たちは、大人しく投降した。
だが、彼女が狙っていたのはこんな小物ではない。
囚人たちを率いていた、男を連れてくるよう部下に命じた。
「海軍は?」
「もう少しで着くそうです」
「遅い」
黄猿が来てから話しを聞こうと、港にて待っていたがいっこうに来る気配は無かった。
苛立つアズリアに、マシューはますます警戒する。
必ず何かが起きる。