BOOK@
□マリージョア編@
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それから30分、誰一人口を開く事はしなかった。
だが、その沈黙を破ったのは当事者の1人黄猿であった。
「コングさぁん、一つ聞きたいんですがねぇ〜………………彼女とはどういった関係何ですかぁ〜い?」
「まぁ、何だ幼なじみみたいなものだ」
ムスッとした顔でタバコを取り出すと火を付け紫煙をコングに向けて吐き出す。
禁煙だろうと関係ない。
このイライラが治まるのであれば、怒られようが何されようが構わないと思っていた。
「お前ここ禁煙だぞ・・・・・・」
「だから?」
全くマナーがなっていないなと、呟きながら灰皿をテーブルの下から取り出しアズリアに差し出す。
どうやら、初めて事ではなくちゃんと彼女の為にわざわざ灰皿を用意していたらしい。
「幼なじみって、どう考えても見えねぇんですがぁ〜?」
「見た目は若いが、中身は70過ぎた婆さんだ」
「そりゃ〜一体どういう意味ですかぁい?」
その話しを出した途端またしても静かになり2人は黙る。
黄猿は何か地雷を踏んだのかと思い慌てて話しを切り替えようとした。
「なぁボルサリーノ、悪魔の実は普通一人に対して一つだろう?」
「まぁ〜当たり前でしょうなぁ〜」
「二つ・・・・何て事があったらお前はどうする?」
「それはあり得んでしょう?」
今まで生きてきた中で、悪魔の実を二つ以上食べたという話しは聞いた事がない。
食べた途端破裂したとか、姿が消えたとかそういった噂は一度だけ耳にしたがあくまで噂だ。
「回りくどい言い方しないでハッキリ言ったらいいじゃないの?」
「つまり彼女はぁ〜・・・・・・・・」
「今お前が思っている通りだ。これは政府の最重要任務の一つにもなっている。五老星からの勅命だからな、尚更私が直に監視役として置かれている」
「………………」
まさか能力を二つ以上持ち合わせいる人間が居たとは夢にも思わなかった。
「わっしなんかにこんな話しをして大丈夫何ですかぁ〜い?」
「隠しきれるとは思っとらん。だから今のうちに教えたまでだ」
一本吸い終えると直ぐに次のタバコに火を付けまた吸い始める。
「吸い過ぎだまったく・・・・」
「女性なんだからぁ〜少し控えた方がいいよぉ〜?」
「お構いなく…………」
タバコの吸い口を噛みしめながら黄猿の質問を軽くあしらう。
彼女も限界がきたのか、吸いかけのタバコを灰皿に押し付けると無言のまま退出した。
「少し言い過ぎたか…………」
部屋の外で待っていたマシューは突然出できたアズリアに驚くと同時に不機嫌な顔を見てやはりこの間の件の事を言われたのだろうと思い何も聞かず後をついて行く。
部屋に残った二人はというとーーーー
「いいんですかぁ〜い?」
「仕方が無いんだよ…………それはあいつ自身が分かっている事だ」
深いため息をつき話しを続けた。
いつもなら威厳漂うコングですら、どこか寂しそうに見える。
それ程までに彼女の事が心配なのだと伺えた。
「昔の話しをしたらあいつに殺されるかもしれんがそれもいたしかたない」
「無理して話す必要ねぇですよぉ〜?」
だがコングは話しを続ける。
大体はありふれた話しだろうと思っていた黄猿であったが聞いていくうちに笑っていた顔も厳しいものに変わっていった。
彼女が誰から生まれたかは分からない。
コングさんが気づいた時には村の住人になっていたという。
幼い彼女は一人で生活をしていた。
狩りや漁、畑仕事など他の大人を見て真似してそうやって育った。
しかし、村に海賊が現れ全てを略奪し焼き払い、大人を殺し、子供は奴隷として連れていかれた。
男の子は労働を、女の子は海賊たちの慰め物としてありふれた話しだった。
コングさんはなんとか逃げ延びて海軍に保護されたがアズリアはそのまま連れて行かれそのまま行方不明となった。
「それからどうなったんでぇ〜?」
「次に会った時はあいつは海賊に、私は海兵になっていた。その間何があったかは分からない、あいつしか分からない事だ・・・・」
それ以上は何も語らなかった。
正確には語れなかった。
しかし、以前村で見た彼女と再会した時の彼女は明らかに違っていたという。
彼女が失踪していた時、何があったのか、何をされたのか、それは彼女自身しか分からない。
何故彼女が政府の監視下に置かれていなければならないのか?
それを聞く事になるとは今の黄猿は予想もしていなかった。