仁亀

□魅録と亀梨
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帰らされた…こんな大雨のなか帰らされた。
んだよ、どいつもこいつも俺のことバイキン扱いして

「あー、暇で暇でしょーがねぇなぁ」

『とりあえず!あんたしばらく外出禁止!わかった!?』

「ひどくね…?にしても…同性愛…ねぇ」

俺の知り合いにいる男といえば

清四郎?あいつが?
ないないない、あんなお固いやつゴメンだわ

美童か?いやいやいやいや
ナルシストはねぇな、俺までうつっちまう

俺がナルシストになったらか…

『やぁ、おはよ!今日も、』

「いやないわ、むりだな」

俺は爽快に片手を挙げてみんなに愛想を振りまく自分を想像した。
だがすぐに身震いがして考えを振り捨てた。

あとは…あー、ないな、

自分の回りにいる男どもはなんとも言えない

「やっぱ同性愛なんてあるわけねーって」


今の時刻は7時ちょっと過ぎ、そろそろ散歩の時間だが…

「どうする?雨だしやめとくか?

…わかった、いこっか」

聞いては見たがすでにリードを咥えているんだから仕方がない。
男山がいきたいと言っているのに俺が行かないわけには行かない

男山にカッパを着せて俺達は言いつけを守らず散歩に出かけた。

「うわっ!さーむい!」

玄関を開けた瞬間にブワッと強い雨風が襲ってきた。
雨のせいで気温も低く一気に体温は冷やされた。

いつもの散歩コースはこの雨だととてもではないが下がぬかるんでいて歩けないだろう。
仕方なく通りやすそうな道を選びながら前に進んだ。

「ん?どうした?」

急に男山がピタリと止まってその場を動こうとしなくなった。
ただずっと何かを見ているような、感じているような、そんな感じだった。

ーべシャリー
どこからか少し君の悪い音が聞こえた。こういうようなものは信じない方な俺はすぐに音の招待を確かめようとあたりを見回した。

「うわっ!」

だが男山のほうが反応はいいらしい。
すぐに音の正体を察知し走りだした。

「あぶねっ!ちょっと待てって!
…おいおい、まじかよ」

急に走りだして止まったかと思えば男山の…いや、俺の前で俺と同じくらいの歳の男が雨具もなしに横たわっていた。

「おい!大丈夫かよ…しっかりしろって、おーい!」

「っぐ…、ぁ…!」

軽く頬を叩いてみれば冷たい指先がじんわりとあたたまるほどの熱が感じられた。かなりの高熱を出しているようだ。

「…ほっとけねーだろ、しっかりしろよ、もうちょっとの心房な」

俺はそう語りかけてから服がぬれるのも気にせずびしょびしょの男を背負った。
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