仁亀

□来訪者
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「よっ、亀梨2日ぶりー」

軽快に手を上げるぴぃとは逆にほとんど真顔でかめが言い放った。

「ほんと、会いたかったよ山下智久」

「はぁ!?どういう意味だよかめ!
俺というものがありながらぴぃに会いたかったってどーいうことだよこの野郎!
てか2日ぶりってなんだよ!」

「そのまんまの意味だけど…ねぇ?山下智久」

「あっ、…あはは、うん。」

さっきからこの二人には会話の意図はわかっているようだが俺には全くと言っていいほどわからない。

正直まったく面白くない。

かめがぴぃのことをフルネームで呼ぶこともかなり疑問だがそんなことどうでもいい。

心の底から面白くない。

そんな時に部屋中に軽快な音楽が流れた。

風呂がわいたらしい。


「ほら!亀梨!入っといでよ!

タオルは上から2番目の棚でパジャマはタオルのところに入ってるよ!

ちなみに仁のパンツは一番下です!」

「おい…」

俺のパンツはどうでもいいだろって
なんでパジャマのことも知ってんだよ

余談ではあるが、かめが家に泊まりに来るのは通のことで、俺の家にはいつもかめのパジャマがストックされている

だがなぜそれをぴぃが知っているのかはわからない。

「知ってるから」

「いやそこ普通に返すとこじないから、
知ってるじゃないから」

パタンとドアが閉じるとぴぃの額に一気に汗が吹き出ている。

「あー!こっわ!眼力だけで殺されるかと思った!」

「てかなに、全然話読めないし?かめに何したの?」

「いやぁ、実は…」

ぴぃが言うには2日前収録でばったりあったかめにとある映画に行ったらしい。

元はといえばその映画は手越と行くつもりだったのだが

頑として手越がチケットを受け取らなくて

どうしようかと迷ったところに収録終わりのかめが丁度帰って行くところについていき

かめを劇場に連れこんで映画をみたらしい。

「んで、なんでそんだけで怒られんの?」

「いやぁ、ホラーの映画でして…」

うわぁ、それはちとまずいな

ポリポリと頭を掻きエヘヘと笑うぴぃだが笑っている場合ではない

むしろ今すぐ帰るべきだ

「かめホラー大嫌いなんだよ」

「え、知ってる」

ん?

「おまっ、わざと…」

「いやぁー、俺のほうが先に見終わったんだけどさぁ
もう出てきたあとのかめの顔がもうすっげぇー面白くってさぁ!」

腹を抱えて大笑いするぴぃ、いや、

待って待って待って、違うだろ

面白いじゃなくて…

「お前はみてないのかよ!?」

「俺はorangeみてた」

「寂しいやつだなぁ!」

となるとかめも一人でホラーを見るはめになったのだろう。かわいそうに

でも俺も怯えながら出てくるかめ見たかったなぁ 

「…か、可愛かった?」

「写メあるよ、買う?」

みる?ではなく買う?と聞いてくるぴぃは流石といえば流石だ。

そしてなんのためらいもなく財布を出す俺。

「300円になりまぁーす」

液晶画面に写ったかめは右手を振りかざし、その右手はすごい勢いでブレている。
殴られたな。

でもうるうるでキッと睨む瞳とグッとかみしめている唇がナイスだ。


「送っといて!」

「送信料と手間賃とダウンロード料で500円の追加でーす」

テーブルにおいておいた500円をそのままぴぃに支払った。

いい買い物をした。心はホクホクだ。

「…お風呂、出た」

「ん?はいはい、じゃあこっちおいで」

びしょびしょの髪の上にタオルをかけただけの状態でいつものパジャマを着たかめがドライヤーを片手に俺の前にちょこんと座る。

「ん、ドライヤー」

それを無言で渡すかめ

そしてそのやりとりを真顔で見るぴぃ

「しっ…新婚か!」

いきなり大きな声を出したぴぃの声にかめの肩がビク!と大きく揺れた

「こら!ぴぃ!かめが驚いてるだろ?」

「いや、叫ばずにいられねっしょ、

髪乾かしてあげるとか、ラブラブだなぁおい」

「いいだろ別に」

わしゃわしゃとタオルドライをしているとここで当初の疑問を思い出した。

「そういやなんでおれんちの風呂なんか借りに来たの?自分ちのは?」

鏡越しにかめの顔を見ながら質問をすれば
今まできゅっと猫みたいに目を閉じていた目がふわっと開く

「壊れた?」

「山ぴぃじゃないんだから壊さないよ」

「壊れたことねぇけどな」

「じゃあなんで?」

木魚の音が聞こえそうなほどの沈黙がしばし

「なん…つうか…」

ポン、と山ぴぃが手をうった

「あぁ!!!わかったー!!!」

さっきよりも大きな声で山ぴぃが叫んだ。

そしてかめもさっきよりも驚きぴょんと体ごと浮いた、そしてその衝撃で俺の顔面にクリティカルヒット

「お前…わざとだろ…」

よしよしとかめの背中を撫でながらぴぃの顔にドライヤーの熱を吹きつけてやった。

もう怖くて仕方がないとでも言いたげなかめは俺の首元に顔をうずめてしっかりとシャツをつかんでいる

てか肉も掴んでる。痛い。

「で、何がわかったの」

「亀梨くんさぁー…お風呂、

怖いんじゃないのぉー?」

ニヤリと笑ったぴぃの意地の悪い顔はもちろんかめには見えていない。

だがシャツと肉を掴んだ手がより一層強くなった。痛い。

どうやら図星らしい

「おっ!お前が変な映画見せるから!!」

「先輩に向かってお前とはなんだよ!」

「うるせぇよ!ぶわぁーか!」

うっひゃあ!可愛い!痛ぇ!

普段なら虎と龍に見えるであろうこの喧嘩も今や虎のぴぃと猫のかめだ。

猫の亀というのもおかしい話だがこの場合はスルーしていただきたい。

「で、かめは俺の風呂なら大丈夫なの?」

「いや…気のせいかもしんないんだけど

2日前から風呂場から物音がしててさ
最初は気のせいだと思ってて…

でもなんか…今日帰ってはいろうとしたら

急に俺の後ろにあった洗濯物が頭の上からバサーって降ってきて…!

すっげぇ怖くて!それに今日は蘭たちも検診でいなくてさ!

でも風呂入らないと気持ち悪いから仁の家来たんだよ」

「なるほど、取り憑かれてんな」

「みなまで言うな!」

「そっかそっか、よく来たなぁ」

「うん、来た」

ぐへ、かめが可愛い

猫みたいに甘えてくる。そして手の力がだんだん抜けてきている。

よきかなよきかな

「またいちゃつく、ほら、早く乾かしていくぞ」

「どこにだよ?」

「目的地は亀梨の家の風呂場だ!」

「いっ!!!」

いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

猫のように爪が刺さった瞬間だった。
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