短編

□重なる影(河合)
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『和サン!こっちー!』


「おーい、走るなって」







私は、和サンと水族館で初デートというものをしています





付き合ったのは1ヶ月前。






片思いだった私に和サンの方から告白してくれた





嬉しくて嬉しくて、
強がって涙をこらえたのはいい思い出










『これ、利央に似てるー!』




私がペンギンのぬいぐるみを和サンに見せる




「確かに似てるな
…名前にも似てると思うぞ?」






和サンが私とペンギンを交互に見る






『うそだ!似てないよ!
利央とも似てるってことになるじゃん!』




私がプーっと膨れると、


和サンが私の腕からぬいぐるみをヒョイ、と取り上げた







「これ、買ってやるよ」


『ほんと!?』


「おう、待ってろよ」







そう言うとレジの方へ向かった













ーーーーーー

帰り道。







『かわいいなぁ!!』



私は買ってもらったペンギンを抱きしめる





「利央が可愛いってことか?」


『ちがわい!!
この場合は私が可愛いってことになるね!』


「どういうことだ」






談笑しながら並んで歩く。






足元には2つの影が並んでいた










『和サン大きいなー』


「ん?名前がちいせぇだけじゃねぇのか?」


『んな!?ひどい!』





私がグンッと背伸びをすると



一瞬、唇に柔らかい感触。









『…っ!?和サン!!?』




私は慌てて口元に手を当てる







「いや、背伸びしてたから、
してほしいのかと」



『し、してほしくなんかない!
…っていうのは嘘だけど…』



「ハハッ、なんだそれ」










2人の影に視線を落とす









自然と、手を繋いでいた










「なぁ、名前」


『なにー?』






影を見たまま返す






「駆け落ちでもするか」




『っへ!?駆け落ち!?』





私は、驚いて和サンを見る







「ハハッ、ジョーダン」


『な、なにそれぇ、、』





私は呆れて力が抜ける。







「嘘、本気」



『ぇえええっ!??』



「ハハハッ、おもしれぇなぁ」







笑っている和サンの横で赤くなる私。









『け、結局ジョーダンなわけ?』


「本気だとしたら付いて来るか?」





『当たり前じゃんか

…ずっと一緒にいましょう』










…返答がない







ふと和サンを見ると



真っ赤になって俯いていた







こんな和サンを見たのは初めてで。









「お前なァ、そういうの唐突に言うのは反則だ、」


『へへっ』







 





足元に並んだ2つの影。




なんだか距離が近くなっている気がした







 

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