桜蛍
□始まり
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京の見回りから屯所に戻ると、
いつものように…
「お、おつかれさん」
と、僕を見つけ話しかけてきたのは、
十番組・組長 原田 佐之助だった。
「佐之さん、こんなところで何してるんですか?」
僕は、隊士に解散を命じてから佐之さんを見ながら聞くと
「たまたま通りかかったら、ちょうどお前らが戻ってきたんだよ。」
「ふ〜ん、」
「これから土方さんの所に報告にしに行くんだろ?」
「そうですけど?」
「じゃ、遅くなるとわりぃな」
「そんなことないですよ?
何かご用ですか?」
「いや、大したことないんだけど…」
いつもの佐之さんらしからぬ言動に僕は不思議そうに首を傾げると、
「ん〜…、いや、やっぱりいいや…
きにするな」
「? そうですか?」
「あぁ。
ほら、早く行かないと土方さんに叱られるぞ?」
佐之さんはそう言うと、そのまま歩いてしまった。
僕は、その後姿を『何かあったのかな?』と思いながら、足早に土方さんの部屋に向かった。