小説

□君のためのチョコレート
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「晋ちゃ〜ん!今日は何の日か、知ってる?」

優しい日が照らす窓側の席は今日も賑やかだった。

「今日は…バレンタインだろ?それ位知ってる」

クスリと笑う高杉。

(あーーーーー。可愛い…。)

少し離れた席でその様子を見ていた沖田は、あまりの可愛さに脱力した。

「ねーえ?俺にくれない?チョコ。」

「何でだよ。」

俺もあんな風に素直になれたらなー。


拒否られても…いや、拒否られたらへこむ。

こんなんだから嫌なんだ。

守るなんて無責任な事言いやがって…。

「じゃ、俺はお前にチョコやるよ。大事に食えよ!」

「あ…ありがとう…。何で…俺に?」

上目使いの高杉…。

糞坂田、早く失せろ。

「これからもよろしくって意味でな、後はお返し待ちだな」

そう言って去って行く坂田。

勿論、俺を見てニヤケながら。

(うぜぇ…)

「お…沖田…」

「は……えっ高杉!?」

イライラしていたら、いつの間にか高杉が目の前にいた。

「怒ってたか…?」

伏せ目がちで、チラチラと俺を見ている。

「いや、何でもありやせんよ。ところでなんですかい?」

激しく机に頭を打ち付けたい気持ちをぐっと抑え、平静を装う。

「いや…その…」

いきなり口ごもる高杉。

「?」

「これ…嫌じゃなかったら…」

す…と差し出された物は、可愛くラッピングされたチョコ。

えっ…?坂田には無かったのに?

「ち…違うからな。適当に歩いてたらチョコ売ってる店員に捕まって…面倒だったから買っただけで…」

あ、これ…この表情…。

意地悪してぇ。

「へぇ…坂田さんにあげれば良かったんじゃないですかぃ?」

「…たまたま沖田の顔が浮かんで…渡そうと思ったから…」

「それだけ?」

「…っ!お前が、あの時…あんな事言うから…」

「えっ?」

「とにかく受け取れ!これからもよろしくって意味だよ!」

そう言って自分の席へ戻って突っ伏してしまった。

このチョコ……。

一生食えねぇかもしれやせんね。



おわり

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