小説

□きもち
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「地球外の技術を駆使してようよう完成した!これが『タカスギンガル』じゃ!!」

「…は?」

「すごいぞ坂本!作者の語彙力の乏しさが露呈している良い名前だ!」

「いやテメェら何に技術駆使してんの?」

坂本がジャーン!と効果音を付けながら見せたものは蝶の形をした中央に画面があるカラクリだった。

きっと名前からして高杉の思っていることを〜とか言い出すのだろう。

正直言って銀時はめちゃめちゃ腹を立てていた。

「(高杉を理解すんのは俺だけで充分だし機械に頼らねーと高杉の真意がワカラナイーとか舐めてんじゃねーぞ俺だけが分かってりゃいいんだよこちとらファッ〇した仲なんだよ)」

そう、銀時は同担拒否であった。

高杉は誰にも渡したくない、てか高杉は俺と出会った時から俺しか見てなかったし世界壊したかった理由も俺だったし俺がいない時も結構俺の話してたし、もう俺のだろ、俺の高杉、ハイ決定です出てってください〜位の同担拒否だ。

万斉くんの惜しみのない高杉へのリスペクトや愛情で1ミリ程度収まったが高杉と10年ぶりに共闘してから再発した。

あーもう俺のです、確かに高杉は鬼兵隊が大好きだけど愛し愛される関係にあるのは俺だけでーすになった。

「この同担拒否ウザイ(まあそんな顔をするな銀時。もしかしたら高杉がずっとお前に隠してたことがあるかもしれないだろ?そんなことがあったら俺も知りたいしな)」

「言ってることと思ってること逆な」

「そういう事じゃ金時、黙ってついて来い」

「うえええぇ吐きそう…」



3人は高杉のいる場所を突き止めた。

ごく普通の宿で、とてもテロリストがいるとは思えないところだった。

「何しに来たんだよ、バカ3人に来られちゃ落ち着けねぇだろ」

坂本が声を潜めて話す。

「高杉の心に変化があればこの機会が反応するんじゃが……」

銀時は嫌々ながら機械を見た。

ピコンッ!

『また3人に会えて嬉しい。お茶を出したい。』

「ブフッ!!!?!」

3人は一斉に倒れそうになった。

今までこんなに可愛い高杉を見たことがあったか、いや無い。

確かに可愛い瞬間は沢山あった。

しかし…お茶を…出したい…だと!!?!

「「「(何なんだこの可愛い生き物…!!!!)」」」

銀時は今までの自分をぶん殴りたくなった。

「(神様仏様お許しください…そしてありがとうございますこんなに可愛い高杉を見たのはいつぶりか分かりません…!!!)」

「何やってんだテメェら…?」

もちろん、高杉はその状況についてこれていなかった。

3人が何を持っているのか、何をしに来たのかも分からないのだ。

死にそうな中、桂が口を開いた。

「高杉、ツナマヨおにぎり作ってきたぞ、また痩せたのではないか!?」

「いらねーよ」

ピコンッ!

『ヅラが相変わらずで心地良い』

桂はヅラじゃない桂だ!と心の奥で叫んだ。

しかし高杉の本心のお陰で叫ばずに済んだ。

「(あまりに可愛い…俺が手塩にかけて育てた高杉がこんなに可愛くなっているとは…)」

「坂本、銀時、少し散歩に…うっ…」

「…ああ」

桂は高杉の可愛さと嬉しさに涙を流した。

「おい、ヅラはいいのか?」

ピコンッ!

『まだ桂といたかったのに…』

「ヅラはのう、きっとおまんの可愛さにやられたんじゃ」

「…は?訳分からねぇ」

高杉は怪訝な顔するがすぐに桂の行った先を心配そうに見つめた。

「ヅラは大丈夫じゃ、そういえばわしもおみやげ持ってきたんじゃがいるかのー?」

「お前が?珍しいな」

坂本を見上げ、目を丸くする。

ピコンッ!

『俺のためにわざわざ…やっぱり坂本は優しいんだな』

「ゴッファ!?」

阪本は鼻血を噴いた。

出たではなく、噴いた。火山の如く。

「金時、わしゃあ鼻血を止めてくるぜよ。後はうまくやるんじゃ」

そう言って渡されたのはタカスギンガル。

画面にはこう書いてあった。

『もっと4人でいたかった』

高杉を見るとキセルをふかし、微塵とも寂しそうに見えない。

「(俺は…高杉のことそんな分かってなかったんじゃ…)」

「銀時ィ、てめぇは何しに来たんだ?」

「俺?俺はアイツらに無理やりな」

「ハッ、まぁテメェは昔からそういう奴だからなぁ…」

「悪かねーよ、俺もたのしんでるからな」

「そうか…」

短い会話、すぐに沈黙が訪れた。

すると、タカスギンガルが反応した。

『ずっとそばにいてほしい』

銀時は驚き、高杉を見た。

やはり高杉からはそんな素振りは見られない。

「(昔からそうだったのか?)」

そうだとすると、自分は本当に高杉のことを分かっていたのだろうか…不安が過ぎった。

「…高杉」

呼びかけた瞬間、タカスギンガルが反応する。

『嫌だ』

『離れたくない』

『何で会いに来たんだ』

今までずっと寂しかったのなら。

ずっと辛い思いを隠していたのなら。

高杉はきっと泣いていたのかもしれない。

自分の思いを隠して、涙をこらえて、苦しかっただろう。

銀時は静かに立ち上がった。

ピコンッ!

『何処にも行かないでくれ』

高杉は静かに俯いた。

攘夷戦争で、同胞を亡くした時も同じように俯いていた。

静かに、誰にも気付かれないように。

結局俺も機械のお世話になってしまった。

「高杉、もう離さねぇよ」

力を入れると壊れてしまいそうだった。

優しく、ひたすらにやさしく抱きしめた。

「いきなり訳分からねぇよ…離れろ」

「いいや離さねぇ…ずっと一緒だ」

銀時は部屋の外の気配に気づいた。

「で、てめーらはどうすんだ?俺は高杉離さねぇけど」

ガラリと音を立てて襖が開く。

「離さないに決まってるだろ高杉ィィィィ!!!これからは勝手に外泊するのは禁止だからな!!」

「…は?」

「そうじゃ高杉!!これからずっと一緒じゃ!わしらに甘えていいんじゃ!!」

「何言ってんだてめぇら…」

何も理解できていない高杉を3人で抱きしめた。

戸惑いながらも高杉は嬉しそうに笑った。

『ありがとう』


終わり

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