小説
□新たなセコム
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いつものプレハブ小屋の中、高杉は退屈していた。
変な3Zのクラスメイトもうるさい風紀委員も来るわけでもなく、淡々と時間が過ぎていくだけ。
「(晋助様暇そうッス…)」
また子はケータイを横目にうとうとし始めている高杉を見た。
「(ま、平和でいいんスけどね)」
その時、扉が壊れんばかりの勢いで開き弾丸のような速さで人間が高杉に襲いかかってきた。
また子は反応に遅れ、ただ息を呑むことしかできなかった。
「…誰だてめぇ」
「(めっちゃ眠そうな声してるっス!!そんな所も素敵すぎッス!!!!とか思ってる場合じゃねぇ!!!)」
しかし、高杉に向かっていった本人は何もせず、高杉の肩をぎゅっと掴みプルプル震えている。
高杉はせっかくのうとうとタイムを邪魔されて少し怒っていた。
「俺が眠そうにしてたのに…随分いい度胸してんなてめぇ…」
「(眠いからかなんか口調が可愛くなってる…!?)」
突然、高杉の肩から手を離し抱き締めてから叫んだ。
「わ、忘れたのか…!!!私の名前は朧だ!!お前が心配で来てみればなんだ!!授業をサボっているとはどういうことだ!!!」
「いや誰ェェェェェェ!!!」
また子は思わず叫んだ。
無理もない、これはもっと高杉くんで朧と対峙する前の設定だ。
「貴様こそ誰だ!!大切な弟弟子の周りをウロウロと……!!!鳴門金時のような髪色の者が晋助に良い影響を及ぼす筈がない………帰るぞ晋助!!!」
「いや例え独特すぎっす!そして晋助様を何処に連れてく気なんスか!お前も豆腐みたいな髪色してる癖に!」
「なんて汚い口調なんだ!!そして人の髪を食べ物で例えるとは………!!」
「先言ったのお前ェ!!!」
と、朧とデジャブを感じるやりとりをしていた時…。
「おぼろ…朧…兄弟子…あぁ、そろばん塾の…」
「そうだ!お兄ちゃんと呼べというのを忘れたのか?!」
「は…?知らねぇな」
「思い出せ!いや、思い出さなくていい!私をお兄ちゃんと呼んでくれ!!」
「あ?あー…兄貴」
「違う!!!お兄ちゃんだ!!!!」
「いや何かキモいんすけど!!」
そばでやりとりを聞いていたまた子は思わず叫んだ。
お兄ちゃんという響きにこだわり過ぎではないか…何を求めているのか…何もわからない。
すると、またも来客がやってきた。
「高杉、お前は忘れたのか…お兄ちゃんの存在を……」
「あ?何でヅラがいるんだ?」
「ヅラじゃないママだ。今日から俺がお前のママで朧殿がお前のお兄ちゃんであることが厳粛なる会議で決まった」
「話が見えねぇな、付き合ってられねぇ」
高杉は席を立った。きっと屋上に行くのだろう。
「どこへ行く、弟よ」
「弟じゃねぇ、屋上だよ…関係ねぇだろ…」
すると、2人の目付きが変わった。
獲物を狩るような、敵を見つけたような目付きに。
「(まさか…屋上でケンカを…?)」
また子はガラリと変わった2人を前に冷や汗をかいた。
「屋上には銀八がいるだろうがァァァァァァァァ!!!!」
「ママはアイツとの交際は許してませんんんん!!!!」
「いやどこ視点だよ!!!」
斜め上の声に思わず突っ込んだ。
もうまた子の体力は限界だ。
「いいか晋助、お兄ちゃんとして言うがアイツはダメだ。何だかサイコパス臭がするぞ…お前は真っ白のままでいてくれ」
「それアイツのセリフ」
「高杉ィィ!不純な関係は許しません!!」
「お前らのやってることも大概気持ち悪いぜ」
高杉からの冷静なツッコミが入る。
さすが晋助様、ツッコミがクールで素敵ッス!
「晋助様カッコイイっすけどおまえらなんなんスか!?!!!」
「ん?ああ、名乗るのを忘れていたな…俺たちは」
「「高杉の純白を守る会だ」」
その後、鬼兵隊と銀魂高校内外問わず高杉ファンクラブが入会し大きな勢力となった。